疲れきった俺たち四人、帰り際にみんなでソフトクリームを食べた。
夕暮れ近くでもまだまだ太陽はやる気に満ちていて、ソフトクリームが溶けないようにすこし慌ててしまう。やっぱり俺とかずくんは違う味を選んでかわりばんこに食べる。それを黒木華は面白そうに眺めていた。
「楽しかったねっ」
黒木華がソフトクリームを舐めながら笑った。
そして、片手をおでこの辺りに当てて
「おかげさまでお化け屋敷も無事調査完了です!」
と敬礼のようなポーズをとった。
俺と風間はそれに「よかったよかった」と笑い返した。俺が先輩だとわかったからか、時々丁寧な話し言葉になる。でもすぐ忘れてしまうのか、くだけた口調に戻るのがなんか可愛かった。
俺のチョコ味のソフトクリームを舐めていたかずくんが、黒木華の調査完了という言葉にコトンと首を傾げて、「お化け屋敷さ」と言った。
みんながかずくんを見た。
「今度は景子ちゃんと行きなね。華ちゃんと一緒ならきっと景子ちゃんも大丈夫だよ」
かずくんの眼差しはとても優しかった。
俺はそんなとんでもなく男前なかずくんに見入ってしまう。黒木華もほっぺたを赤くしてじっとかずくんを見つめていた。
「いいんだよ、彼氏がいたって。親友なんだもん、遠慮なんかしないでどんどん誘っちゃえ」
中二の夏は一度だけなんだからさ。
かずくんの柔らかい声がそう続けた。
そうだ。かずくんの言う通り。
そして俺の中三の夏も一度きり。
試合、がんばらなきゃな。
とりあえず練習だ。明日からまた大会に向けて突っ走るぞ。
二人のことが気にならないと言ったら嘘になる。
なんならお似合いの二人なんじゃないかとまで思えてきたりして、正直心がザワザワしてるくらい。
せめて黒木華がもっとイヤな子だったらよかったのに。そしたら思い切り対抗心バチバチでいけるのになあ。そして、そんなこと考えてるって事にもため息が出てしまう。ちっちぇなぁ、俺。
だけど今は大会に集中しようと自分に言い聞かせた。