風間オススメのアトラクションもほぼ回ったし、そろそろ帰ろうかとなったところで、黒木華が不意にお化け屋敷の前で立ち止まった。
昔からあるこの遊園地でもハイテク化している中で、忘れ去られたように古色蒼然レトロ感たっぷりのお化け屋敷。
黒木華は上目遣いで俺たちの顔を見まわした。
「あのね、お化け屋敷って苦手?」
げげ。俺がいっちゃん苦手な奴だ。
見た目は子供だましでも、中がそうとは限らないよな。案外めっちゃリアルかもしれないし。
俺は心霊現象とか幽霊とかいまだに苦手なんだ。なんか視えちゃった?こともあったりして(たぶん)。
作りものだとわかっていても気持ち悪い。
「なんで?行きたいの?」
「うん。でもほら、ジェットコースターの時みたいになると申し訳ないから」
いやぁ、かずくんも怖がりだし。無理じゃね?
風間はこういうのも好きだから、こいつと行けばと言おうとして気がついた。
お化け屋敷の入口に入っていくお客さんは家族連れもいるけど、かなりの割合がカップル。中でイチャイチャする気満々って感じだ。
そうか、黒木華はかずくんと入りたいってことか。そうか、そりゃそうだよな。
俺はチラリとかずくんを盗み見た。
かずくんは怖がりなのに、どうするんだろう。
「無理そうなら一人で行ってきてもいい?待たせちゃうの悪いけど」
ええ?一人でって。
イチャイチャしたいんじゃないの?
どんだけお化け屋敷好きなんだよ。
そんな俺の気持ちを代弁するように風間が言った。
「そんなに好きなの?お化け屋敷」
「好きっていうか、実は景子ちゃんに見てきてって頼まれてるの」
なんでも北川景子の彼氏がホラー好きで、一緒に入りたがるのだけど、本人はあまり得意ではないので、事前に見てきてほしいのだそうだ。
うーん、大丈夫なのその彼氏。イチャイチャしたい下心丸出しじゃないの。いや、それが普通なのか。俺はかずくんがイヤならやめとくけどなぁ。
「いいよ、一緒に行こ」
かずくんがニコッとして入口に向かって歩き出した。マジか。男前が過ぎるだろ。
ジェットコースターでの汚名返上ってこと?
大丈夫かな…って、大丈夫じゃないのは俺だよ。
うろたえる俺に、
「あぁ、相葉くんは待ってなよ」
と、かずくんがこれまた男前に笑ってみせた。
俺が苦手なこと知ってるもんな。だけど……。
どうしようかと迷っていると、かずくんが黒木華に手を差し出すのを見たら、
「行く行く!俺も行くって!」
俺はそう叫んでいた。
バカかな?どうすんだ、俺!?