「えっ、なに?」
俺とかずくんは同時に声を発した。
黒木華の視線の先には、かずくんが抱え込んで食べているカツ丼、そして俺が齧りついていたハンバーガー。俺はかずくんのコーラを一口飲んだ。
「だって…さっきと違うの食べてる」
戸惑う黒木華を前に、きょとんとする俺たち。
「あー、それね」と風間が説明を始めた。
「この二人ね、これでフツーなの。昔からなんだけど、別々の物を頼んで半分こするんだよ」
あぁ、その事か。
俺とかずくんは外でなにか食べる時、違うものを頼み、それを半分ずつ食べて、途中でとりかえっこするんだ。
そうすればふたつの味が楽しめるし、かずくんが苦手なものを俺が食べてあげられるからね。
いつも当たり前にそうやっていたから、何も考えずに今日もとりかえっこしてた。
「へえぇー、なんか兄弟みたい」
黒木華は感心しきりだ。
他人が齧ったものを食べるのはなかなかハードルが高いんだって。風間も「だよねぇ」と笑ってる。
他人じゃねーし!なんなら兄弟でもねぇわ。
「そういうの、…間接キスにならない?」
俺は飲んでいたコーラをぶーっ!と吹き出した。
赤くなったかずくんが「汚ぇなっ」と文句を言うと、いたずらっ子みたいに笑う黒木華が「それは汚いんだぁ!」と大笑いした。
俺はもうドキドキしてしまって、食べてるハンバーガーが喉に詰まりそうだ。かずくんはどう思ってるんだろう。ハンバーガーの包み紙の端からチラリと覗く。
かずくんは赤いながらも澄ました顔で黒木華に話しかけていた。
「華ちゃんは、景子ちゃんの飲んでるジュース、飲めないわけ?」
「えっ…」
黒木華は一瞬押し黙った後「飲めるよ!」と答えた。ほっぺたが赤くなってる。ほらぁ、かかか間接キスとか言うからさあ。
更にかずくんは話を風間に振る。
「風間ぽんだって、俺が飲んだジュース飲めるでしょ?」
「いやいや、遠慮しときます」
「えぇーなぁんでよ。飲んだこと無かったっけ」
「ないない。だって相葉ちゃんが…痛っ!」
テーブルの下で速攻風間の足を踏んづけた。
余計なこと言うなって!
別に俺はするなとか言ってないもんね。
そういうのを『そんたく』って言うんだよ、たぶん。