願ったり叶ったりの提案だったけどさ、一応俺だって遠慮したんだよ。いくらなんでもデートなんだから邪魔しちゃ悪いだろ。
けど、黒木華はぜひぜひって言ってくれるし、かずくんも反対しないし。結局四人で園内を回ることになった。
もちろんかずくんは黒木華と並んで歩き、俺と風間はその後ろをついて行く形だ。
黒木華は明るくて、話し上手で、俺たちにもいろいろ話しかけてくれた。はしゃいで盛り上がると、ばぁんとかずくんの肩を叩いたりして、ちょっとオバチャンみたいだと思ったことはナイショだ。
どちらかと言えばおとなしめなかずくんには、これくらい明るくて賑やかな子が合ってるのかも。
やっぱり女の子って華やかだなぁ。
って、まんま黒木華の華じゃん。なるほどなぁ。
そうだよなぁ……。

願ったり叶ったりと思った四人行動だったけど、楽しげな二人を目の前にしていると、だんだん気が重くなってきた。だいたい俺、人見知りだし。余計なことばっかり頭に浮かんでくるし。口数が少なくなった俺を風間が気にしてる。
その時、騒がしい園内でもはっきりわかる「ぐーーっ」という音がした。

「うわ、やだっ、恥ずかしっ!」

どうやら黒木華のおなかがなったらしい。
自分のおなかに手を当てて、ほっぺたを真っ赤にした黒木華は、くしゃっと照れ笑いをした。

「おなかすいちゃった。お昼にしない?」

……それがめっちゃ可愛かった。
触れたらぱちんと弾けそうな真っ赤なほっぺ。
かずくんの可愛さとも違う。もちろん俺にも全く持ち合わせてない可愛さなわけで。
敵わない気がした。
俺はかずくんの可愛さのほうが断然好きだけど、かずくんはこっちの可愛さがいいのかもしれない。

四人でフードコートに行った。
お昼時を少し過ぎていたが、なかなかの賑わいで、なんとか座るところを確保する。
いい匂いが充満していて、気が重かった俺の腹の虫も騒ぎ出した。なんだかんだ言っても食べ盛りだからね。それぞれ好きなお店で好きな物を選ぶことにした。
けれど中学生のおサイフでは贅沢はできない。
俺は悩んだ末、丼屋さんでカツ丼を頼んだ。
かずくんはハンバーガーセット。黒木華も同じ物にしたらしい。風間は冷やし中華だった。

かずくんと黒木華が並んで座り、向いに俺と風間。いつもならたとえ向かいあわせの席が空いていても、俺とかずくんは並んで座るもんだから、なんだか落ち着かなかった。
でも仕方ないよな。そう自分に言い聞かせる。
食べながら、次どのアトラクションに行くかの相談が始まり、風間と黒木華がマップを見ながらあれこれ話し合っていた。
二人に任せとけば大丈夫だろと、俺たちは今週発売の少年漫画誌の話なんかをしていた。
俺がかずくんのコーラに手を伸ばした時、

「あれ?」

と、黒木華がこっちを向いた。