それから何日か、またがむしゃらに部活に取り組んだ。人一倍いや、二倍三倍自主練もした。
そうでもしないと、すぐにあの不毛なぐるぐるループに陥って、どこまでも気分が落ちてしまう。
かずくんの手を離したくない。
でも本当に好きならできるんじゃないか、かずくんのためなら。それができないなんて、ただの自己中、サイテーだな、俺!
だからと言って「よかったな、がんばれよ」なんて、とてもじゃないけど言えやしない。だって俺にはかずくんが必要なんだもの。離せないよ。
いや、それもサイテーなんだって。
もおぉー!俺はどうしたらいいんだよ。
……って、いかん、いかーん!
一瞬のスキをついてまたループにハマってる。
考えるな、考えるな、ボールに集中だ。
なんてことを繰り返して、俺はもうぐったり。
部活終わり、汗みずくの顔を洗ったのを拭きもせず、ぼーっと体育館前の通路に座っていた。
今日は確か図書委員の当番の日。
これまでなら、かずくんが帰りがけに立ち寄ってくれて、一緒に帰ってたのに。
どうせ黒木華とイチャイチャ帰るんだろ。
ちくしょう。
「はー…」
いつまでも明るい夏の夕方。
後輩たちもみんな帰っていった。
もう考えたくない。とっとと帰って寝るか。
しかたなくのろのろとカバンを引き寄せていたら、ペタペタと聞きなれた足音が近づいてきた。
「相葉くん、帰ろっ」
いつも通りの涼しげな顔をしたかずくんが俺の前に立った。俺はおたおたうろたえる。
「えっ…、ええと華ちゃんは?」
「例の親友、北川景子と帰るって」
「いいの、それで」
「すっごいうれしそうだったよ」
かずくんはそう言ってニッコリすると、俺の手を取って立ち上がるのを手伝ってくれた。
それだけでなんだかドキドキした。
「もー、ちゃんと拭きなよぉ。汗かきすぎ」
かずくんがポケットから出したタオルハンカチで、俺の顔をちょっと乱暴に拭いてくれた。
乱暴なのはわざと。いつもの照れ隠し。
口は尖ってるけど目は笑ってる。
俺もわざと「汗じゃねーし!洗ったの!」とか言い返す。かずくんが「いや絶対汗じゃん」と笑い出すから、俺も笑った。
少しだけ胸の中のぐるぐるが収まった気がした。
なぁんにも解決してないんだけどさ。
ずっとこうしていたいな。
俺の、俺だけのかずくんでいてほしい。
けどやっぱり、かずくんが笑っているのが一番好きなんだ。
俺は大人にならなきゃなんない時が来たのかも。
……なんて。
心の中でカッコつけていたら、
「今度華ちゃんと遊園地に行くんだよ」
とか言われて。
カッコイイ大人の俺はどこへやら。
家に帰って速攻、風間に電話をかけた。