そんなこんなで、黒木華と付き合ってみると言うかずくん。
嘘だろ。そんなんでいいの?そーゆーのあり?
黒木華の気持ちはよくわからないけど、かずくんは聞く限り完全に恋愛ごっこだろ。
それなら俺とでもいいじゃんって言ってしまいそうで、慌てて口を押さえた。

幼稚園からこれまで、もうずっと一緒に歩いてきて、その間誰も俺たちの仲に踏み込んでくるやつはいなかった。だから何も心配する必要もなかったし、わざわざ「俺と付き合って」なんて言わなくてよかったんだ。
でも考えてみれば、まさにお年頃の俺たち。
こんな事が起こっても不思議じゃなかったのに、俺は全くの無防備でうろたえまくりだ。
ああぁ、なんで思いつかなかったんだろ。
どうする?
かずくんに告白しちゃう?
お嫁さんになる約束を忘れているのに?
俺の中では、まっすぐな目で「うん」と頷く幼いかずくんの姿があまりにも鮮明で、今も変わらず頷いてくれるとしか思えなくて。
けど。
そうじゃないかもしれない。
そうじゃなかったとしたら……。

俺は怯んでしまった。
情けなくて泣きそうだ。

このままじゃ、ただの恋愛ごっこでも本当に好きになってしまう可能性もある。
そう思うといてもたってもいられないのに。

「相葉くん?だいじょぶ?」

かずくんが俺の顔を覗き込んだ。
そう、それだよ。その「相葉くん」も俺を怯ませるんだよな。「まーくん」とくらべたら、ちょっと距離を感じてしまう。

結局俺はなにも伝えられずにその日は終わった。
かずくんが、お風呂そうじを頼まれていたことを思い出して帰らなきゃならなかったから。

「ごめんね」

少し心配そうにしてるかずくんがめちゃくちゃ可愛くて、俺はただもうかずくんの頭をぽんぽんするだけで、なにも言えなかった。

どうすんだ、俺。
どうしたらいいんだよお!