かずくんはきょとんとした。

「あの子って誰?」

はあ?なんだそれ。
こっちがそれを聞いてんの!
図書室で一緒だったろって言ったら、「あー、華ちゃんのこと?」ってさあ、この様子じゃ風間のやつ、ガセ掴まされたんじゃない?そうだろ、絶対。なぁんだ…、

「付き合ってる、かな」

無理やり安心しかけたところに衝撃発言。
俺はショックのあまり棒立ちになった。
耳も頭もぼわんぼわんして、言葉が出てこない。
嘘だろ、ほんとに?
俺のかずくんなのに…そんなことある?
そりゃかずくん覚えてないし、俺の勝手な思い込みかもしれないけど。一度は俺のお嫁さんになるって約束してくれたんだよ。それはもう時効なのかな。それとも、あれは俺の妄想だった?
今でも俺たち「特別」だと思ってるのに。

目の前が真っ白になって、ボーゼンとしていた。
何度か呼ばれたみたいで、俺はハッとしてかずくんの顔を見た。

「そんな驚くことぉ?」

かずくんは耳を赤くして笑った。
それを見たら急に身体の中で風船が膨れたみたいに言葉が溢れてきて、今度は口が止まらなくなった。

「俺、知らなかったし!なんだよ、なんで黙ってたんだよ。風間ぽんから、他の人から聞くなんてさあ、すごいショックなんだけど。ひどくない?」

かずくんから聞いたって、ショックの大きさは変わらない、てかもっとデカイと思うけど。
でも言わずにはいられなかった。

「だって、たぶんなんだもん」

……………。
タブンナンダモン?
なにそれ。モンスターかなんかの名前?

「付き合ってんだよね?」
「だからぁ、たぶんね」
「はあ?」

一気に頭が混乱した。
たぶんって、付き合うという言葉にくっつくもの?いやいや、普通くっつかないだろ。
俺はまじまじとかずくんの顔を見つめた。
そして、握っていた手を更に強く握り、つんのめるようにして走り出した。
早く帰ってよぉく話を聞かなくちゃ。