それからの練習は散々だった。
頭から水をかぶったせいで、体育館の床が濡れるだろって顧問に怒られるし、シュートは全く決まらないし、顔面でボール受け止めてしまうし、何もないところで転ぶし。
しまいには「おまえ大丈夫か?具合悪いようなら今日はもう帰れ」なんて顧問に心配される有様。
情けなくて、体育館外の通路にカバンを投げ出して座り込んだ。タオルでガシガシ汗をぬぐう。
こんなことではダメだ。
みんなに迷惑かけるなんて、キャプテン失格だろ。
だいたい俺はこういうモヤモヤが我慢できないんだ。かずくんはせっかちだなって言うけど。
こうなったらもう、確かめるしかない。
怖いけど、かずくんに聞くんだ。それしかない。
進め、俺!突っ走れ!
必死に自分に言い聞かせる。
それなのに、俺を迎えに来るかずくんの姿が目に入ると、せっかくの覚悟も、なんなら心臓本体も俺の身体から飛び出しそうになってる。思わず手で自分の胸を押さえた。
「あれ?今日はもう終わり?見学していこうと思ってたのに」
かずくんは小首をかしげて俺を見つめた。
いつも通り汗ひとつかいてない涼し気なかずくん。
可愛い。なんでそんなに可愛いんだ。
ああぁ聞きたくない。聞きたいけど聞きたくない。
知りたくないけど知らなくちゃならないって…。
「ああぁ、もー!」
「え、なに…」
俺のヤケクソな叫びにビビってるかずくんの手を握って、俺は大股で歩きだした。
「相葉くん、さっきからなんかヘン」
「まーくん!」
「相葉くん??」
「二人っきりの時はまーくんでいいだろ!」
前を向いたままそう言ったら、かずくんが繋いだ手に寄り添うようにしてくっついてきた。顔を寄せて俺の目を見つめてくる。
「どしたの?」
間近にある心配そうな茶色の瞳に見入る。
いつだってこんなふうに俺のそばにいたのに。
「あの子誰。付き合ってるってほんと?」
なんでこんなこと聞かなきゃならないんだ。
俺の声はうわずって震えていた。