「聞いて…ないよね?その顔じゃ」
風間が恐るおそるという感じで、固まっている俺の様子を伺ってる。じとりとイヤな汗が湧き出たところで、俺の頭が、心が噴火した。
「なんだよ、それ!?だからかずくんから目を離すなって言っといただろ!!」
「ちょ、ちょっと、だから当たんないでって」
俺にポカポカどつかれた風間が逃げ腰になる。
「だから言ったのにぃ。もー、落ち着いてよ」
「落ち着いてられるか!!」
俺の人生、一二を争う大問題だぞ。
かずくんが、俺のかずくんが誰かと付き合ってるって、なんだよ、それ!
どこのどいつだ!?
思わず風間の胸ぐらを掴んだ。
「ぐるじぃ…」
これじゃあ話せないと風間に掴んだ手を叩かれ我に返る。「ひどいよ、もぅ」と情けない声で風間が語るには。
相手は図書委員の黒木華。
華とかいて「はる」と読むらしい。
かずくんと同じ2年生で、クラスは隣。
そういえば、かずくんは今年も図書委員をやっていて、今日は夏休みの当番の日だと言っていた。
時間が合えば一緒に帰ろうねという言葉にデレてから、そんなに時間はたってない。
それなのに。
かずくんから告ったんだろうか。
好きな子がいるとか言ってなかったよな。
言ってない、だけ?
そんな大事な事、俺に言わないなんてことある?
頭の中がぐるぐるする。
最近冷たいってなんとなく感じていたのが、にわかに現実味を帯びてのしかかって来る。さっき頭に登った血が一気に引いていった。なんだか目までぼやけてきた。
「相葉ちゃん、大丈夫?」
そんな俺の様子に風間がオロオロする。
「や、その、なんかの間違い、かもしれないよ。本人に聞いたわけじゃないし…」
「…行く」
「え?なに?」
「図書室に行く!」
もういてもたってもいられない。
今すぐかずくんに問いたださなければ。
俺は体育館に顔をつっこんで、「ちょっと抜ける!」と叫んでから、風間の腕を掴んで走り出した。今なら図書室にいるはずだ。