空が青い。
まだ早朝だというのに、真夏の太陽はやる気満々で、日差しが肌に突き刺さる。

俺は朝の日課、小学生の頃から続けているランニングの真っ最中だ。すでに汗だくで、シャツはビショビショ。汗っかきの俺には、なかなかツラい季節だけど、夏は嫌いじゃない。

小学校を卒業したあたりまで、かずくんと一緒に走ってた。
小さい頃からもうずっと、俺の後をついてくるかずくん。振り返るといつでもにっこりしてくれる可愛いのかたまり。将来お嫁さんになるハズのかずくんだけど、訳あって本人がその大事な約束を忘れてるから、俺はただもう思い出してくれるのを待つだけな状態。
だって思い出そうとすると具合悪くなっちゃうからさ。俺としてもムリはさせられないんだよな。

その大事な俺のかずくんが、ずっとくっついてたはずのかずくんが、今は一緒に走ってくれないなんて。テンション、マジでダダ下がり。

なぜかというと。
中学に上がった時、それまで野球少年だった俺が突然の変貌を遂げたからだ。そう!俺はバスケットボールに目覚めてしまったのだ!
それもこれも「スラムダンク」というバスケ漫画のせい。勢い、それでバスケ部に入部したんだ。
一年遅れて中学生になったかずくんはバスケ部には入らなかった。なんでだよ、かずくんも「スラムダンク」好きだったろ!?

かずくんはやっぱり野球愛が強くて、野球をしたかったらしいんだけど、うちの中学、残念なことに野球部はない。
隣の中学校にはあったから、そこを選ぶこともできたのに、かずくんはそうしなかった。
理由を聞いたら、

「まーくんと一緒のガッコがいいの!」

なんて、可愛いこと言っちゃってさあ!
もう俺の心臓鷲掴み。その場で抱きしめたもんね。

にもかかわらずバスケ部には入らず、もっぱら帰宅部且つゲーム部に潜伏中。
俺はさびしいよ。
毎日夜遅くまでゲームばっかしてるから当然朝起きられるわけがない。だからもちろん朝のランニングにも顔を出せないってわけ。

この夏休み、中学最後の試合のため、俺は部活に明け暮れる毎日。試合が終われば即、高校受験にモードチェンジしなきゃいけない、忙しい中学三年生。
少しでもかずくんと過ごしたいのにさあ!
ほんと、つれないぜ!

ブツブツ言いながらうちへ帰ってきたら、

「おかえり」

かずくんが門の前で待ってた。
まだどこか寝起きのぽわんとした顔で、耳を真っ赤にしてる、その姿を見ただけで俺の心臓は跳ね上がった。更に汗が吹き出した。

「もぉー、すごい汗ぇ」

かずくんが手に持ってたタオルでおでこを拭いてくれる。さっきまでのグチグチがどこかに飛んでいって、天にも登る気分だ。
思わず抱きついたら、ぺしっと頭を叩かれた。

「暑いっての!」

もー、恥ずかしがり屋さんなんだからっ。