お父さんの前でなに泣いてるんだ僕は。
そう思うのに涙が止まらない。
お父さんの呆れた顔を見るのが怖くて顔を上げられなかった。
「そうか、友達なんだな」
思いがけない優しい声にますます涙が溢れた。
僕はあの子に泣くなって言ってたんだよ。
なのにその僕があの子をあんなふうに泣かせてしまった。そんなつもりじゃなかったのに。
あんな大ケガすると思ってなかった。
そんなに泣くなんて考えてもなかった。
熱を出すほど泣くなんて。
ねぇ、お父さん。
僕は黒目があの子にしたことに腹を立ててたけど、もしかしたら、ほんとうはあの子、イヤじゃなかったとか、あるのかな?
返事は聞こえなかったけど、お嫁さんになるって言ってたりする?
そんなこと、あるんだろうか。
でも高熱を出すくらい泣いていたというかずくん。
黒目を許せなかったのは僕。
気持ち悪いとか嫌だとか思ったのは僕なんだ。
あの子じゃない。
ああぁ、最悪だ。
なんで今頃気づくんだ。気がつかなきゃよかった。
なにをやってるんだろう、僕は。
言えない言葉が心の中に洪水を起こす。
「お父さん、僕、もし、もしタイムマシンがあったら、あの時に戻って自分を止めたい…」
僕はたまらず泣きながらそれだけ口にした。
かずくんの影響は大だ。ドラえもんのタイムマシンに乗って過去に戻りたいと、この時本気で思ったんだから。
でもお父さんは静かに言った。
「タイムマシンがあったとしても、過去は変えてはいけないんだよ。未来まで変わってしまって、いろいろ困ったことになるからね」
「なんで?未来を変えたいから使うのに?」
「未来が変わるってことは、今あるものが無くなってしまったりするということなんだよ」
お父さんは説明してくれたけど、じゃあ、タイムマシンはなんのためにあるんだ。なんの意味もないじゃないか。
まだありもしない未来の機械に文句をつけながら、僕はしゃくりあげた。