まずいな。
僕の立てた計画がへんな方向に進んでる。
あの子のためのちょっとしたお節介が、他人に「好きだから」認定されてしまった。
あれで「好きだ」なら、黒目の世話焼きはなんになるんだ。「好きだ」の上はなんだ。
なんにしろ誤解されるのはたまらない。
またもややり方を変えなくちゃならないな。

一番心配だったのは、お母さんがお父さんに相談すると言ったことだったが、忙しいお父さんはなかなか捕まらずうやむやのままだった。
たぶんお母さんは僕を元のクラスに戻したいんだ。小学校ジュケンとやらも諦めてないのかもしれない。別にどっちでもいいが、今は困る。
僕の計画通り、かずくんが黒目から自立して赤ちゃん卒業するまでは、さくら組にいなければ。
お母さんに元のクラスには戻りたくないって言うことも考えた。でもうまく理由を説明できる気がしない。お母さんも理解できないだろう。

「かなたは、かなたにふさわしい場所があるのよ」

とか言われるに決まってる。
今回に限らず、お母さんにはうまく伝わらないことが多い。お父さんが「自分が聞きたいようにしか聞かない」とため息をついていたけど、どういうことだ?そんなこと、できるのかな。


誤解されないためにはどうしたらいいのか。
僕はできるだけかずくんと距離を置き、泣きそうな場面で注意するように気をつけた。
しかしそうすると、あの女の子が言ってた「ずっと見てる」になってしまって、ふとした瞬間女の子と目が合ったりしてすごく気まずい思いをした。
計画はどんどん書き換えられ、結果今は僕が少し泣きそうな状況を作りだし、その場で泣かない練習をさせる…になってしまっている。
ちょっと押すとか、ちょっと水をかけるとかしてビビらせているから、いじめていると思われているんだろうな。でもいいんだ、「好き」だと勘違いされるよかよっぽどいい。
驚かして泣きそうになったらすぐに言うんだ。

「あいつ(黒目)が困るぞ」

これだけであの子は泣かない。
まさに魔法の言葉。効果てきめんだ。
こんな方法が正解なのかはわからない。ほんとの事言うとめちゃくちゃな気もしている。けど、僕は焦っていた。