そこで俺は少し素直になって、

「今日うちに泊まる?一緒に寝よっ」

と言ってみたら、まーくんの顔がみるみる輝いた。パアァって漫画の書き文字が見えるようにマジで光っている。わかりやすすぎだって。
そして俺の事をすごい力でぎゅぅーっと抱きしめると、音をたててキスをしてきたから、さすがに慌てて文句を言った。

「ちょ、ここ外だって」
「泊まる!」
「あ、でもお仕置はナシね」
「ほら、早く行くよ!」

俺の言葉を聞いてるんだかどうだか、腕を離すと速攻自転車にまたがって俺を急かす。
ちょっと呆れてため息出ちゃったけど、こんなにせっかちなのに、10年以上も待っててくれたんだと思うと胸が熱くなる。
過ぎた時間は取り戻せない。
それでも出来ることなら、タイムマシンに乗って昔の俺に伝えたいよ。

「かずっ!なにしてんの」

まーくんの声に顔をあげると、かなり離れたところで手を振っていた。
俺も自転車にまたがって思い切りペダルを漕いだ。



内心「お仕置」にヒヤヒヤしていた俺だったけど、その夜まーくんはいつもと変わらず優しかった。
なんとなく落ち着かず、意味もなく部屋をクマみたいに歩き回る俺を自分の膝に呼びよせ、

「かぁわいい!」

と笑った。

「自分から誘ったのになんなの」
「べべ別に誘ったってわけじゃ…」
「一緒に寝るってそういうことでしょ」
「…寝るだけだもん」

まーくんは吹き出して、

「かぁわいい」

ともう一度言った。