まーくんと並んで帰る。
二人とも自転車だけど、今日は乗らずに押して歩いていた。
俺がなかなか乗らずにダラダラ歩くのを見て、せっかちなのにまーくんが合わせてくれてる。
だって、自転車に乗っちゃうとすぐに家に着いてしまうんだもん。なんだか今日はもう少し一緒にいたかったんだ。

「いいよね、マスターとせいさん」

俺はポトリと言葉を落とす。
まーくんが「ん?」とこちらを見た。

「なんか、よくない?俺、あんなふうになりたいって、ちょっと思った」
「ふふ、俺たち二人で喫茶店、やる?」
「そーゆー意味じゃないっての」

まーくんがくふくふ笑う。
わざと言ってるんだろ、絶対。口をとがらせる俺の頭をぽんぽんして、まーくんが「わかってる、わかってる」って、ほらやっぱり。

「確かにいいよね。でも、俺たちは俺たちだよ。俺たちのカタチを作っていけばいいんだ」
「え」

突然の超大人発言にびっくりして、自転車を押すのを忘れてしまった。立ち止まったからまーくんの手が俺の頭からはずれて、宙に浮く。

「って、マスターが言ってた」
「……なぁんだ、受け売りかよ」

まーくんはやっぱりくふくふ笑ってる。
もうもう、あんまり男前すぎると惚れ直すとこだったじゃん。俺は赤くなる顔を見られまいとそっぽを向いた。そこでハッと気がついた。

「マスターに俺たちのこと話したの?」
「話したよ」
「そそそそっか…」

話すって言ってたもんな。
俺だっていろいろ聞きたいから知られてもいいと思ってた。けど、そういうことは事前に言っておいてくれないと、心の準備ってものがあるじゃない。
まーくんは「だからイチャイチャしても大丈夫!」なんて笑顔全開で言っちゃってさあ。
そういうことじゃないのよ。