ため息とともに、横たわるラグの中にズブズブ沈みこんでしまいそうな俺に、まーくんが言った。

「カップルだと思う」
「……なんで?」
「お揃いの指輪してた」

俺はまーくんを見上げた。
全然気がつかなかった。顔ばっかり見ていて、手なんか全く見てなかったもん。
まーくん、何気にすごいな。
マスターが指輪をしていたか思い出そうとしたけどあやふやで、そういえばしていたかも…くらいだ。
まーくんはコーヒーの淹れ方を教わっていたから、マスターの手元をよく見ていたのかもしれない。

「そうなんだ…」

俺はまた視線を戻し、まーくんの膝にできたGパンの皺を指でなぞった。
まーくんの指が、俺の額にかかった髪の毛を撫であげるのが気持ちよくて目を閉じる。
不思議だな。
話しただけで、少しラクになってる。

「俺だって聞いてみたいよ。なにしろ大先輩ってとこだもんな。しかも幼なじみなところも同じだなんてさ、運命感じる!」

まーくんが屈んで俺の額にキスした。
そのキスに「大丈夫だよ」という気持ちを感じて、俺は身を起こしまーくんを見つめた。

「あの二人が何を揉めてんのかよくわからないけど、落ち着いたらいろいろ教えてもらお!」
「まーくんは前向きだなぁ。つまり俺らのことも話すってこと?」
「そう。かずは俺のお嫁さんですってね!」
「嫁じゃないしっ」
「え〜?」

まーくんは笑いながら俺をギュッと抱きしめた。
俺もギュッとしがみつく。
こうやっていつも、俺のこと引っ張りあげてくれるんだ。落ち込んでた気持ちがふわふわした。

「俺たちのことも話さないと、それこそ興味本位だと思われちゃうだろ。俺たち真剣にお付き合いしてて、いろいろ知りたいんですってわかってもらってからじゃないとね」
「うん。そうだね」

真面目に興味がある。
今はとりあえず大学受験のことで頭いっぱいだけど、その先もずっと二人で歩いていくんだから。
マスターたち、何を揉めてるのかなぁ。
解決するといいんだけど。
そんなこと考えていたら、まーくんがくふふと笑って言った。

「ね、あの二人。どっちがお嫁さんだと思う?」

はあ!?
さすがにそれは下世話だっての。
速攻頭をはたいておいた。