「おかーさんと合わないって、反抗期?」
「もう反抗期なんて終わってるだろ。そういうんじゃなくて、小さい頃からだ」

本郷の目が「まだ反抗期なんかやってるのか」と呆れているように見える。
俺、元々そんなに反抗期ってなかったもんね。そういや、まーくんにもあんまりなかった気がする。

「おかーさんと話さないの?」
「中学の時離婚したから今はいない」
「あ…そうなんだ」

聞かなきゃよかったと思っていたら、

「おまえ、変な同情してんじゃないだろな」

と肩を小突かれた。
真っ白な顔がわずかに赤らんでるみたいで、こういうところ、なんかかわいい気もする。
本郷ってほんとによくわからないや。
まーくんが言っていた通り、俺のことが好きってのは間違ってないみたいだけど、恋愛感情とも違うんじゃないかなぁ。
とにかく嫌われてないらしいので、目が合ったからニッコリ笑ってみる。
本郷はぴくりと片眉を上げて、無言で廊下を歩いていってしまった。え、今、舌打ちしなかった?

「マジでわけわかんない!」

そこで朝補習に遅刻しそうなことに気がついた。
俺は慌てて教室に駆け込み席につくと、隣の生田が声をかけてきた。

「おまえ最近本郷と仲いいんだな。どういう風の吹き回し?」
「えぇ?どういうって…。ふつーに友達?」
「マジで?へぇぇ!」

へぇぇって、そんなに驚くこと?
そうか。おっさんに襲われた時、本郷がまーくんと一緒に助けてくれたこと、潤くんには言ったけど生田に話してなかったな。
情けない話だし、学校で知ってるのはあとは風間くらいだもん。

「あいつにも友達いたんだなぁ」
「言い方!ひどくない?」
「いや、だって、クラスでも孤高を貫いてるらしいからさ」

そうなんだ。
まぁ、そうだろうな。

「そんなに悪い奴じゃないよ?」

俺はそう思ってるから、生田に伝えておいた。
わかんない奴だけど、悪い奴じゃない。
たぶんね。

そこに先生が来て、朝補習が始まった。