まーくんが俺の手を握って立たせてくれた。

「まーくん…どうしたの?」
「どうしたのはこっちのセリフ!お店から帰った常連さんが、かずが座り込んでるって、わざわざ戻ってきて教えてくれたんだよ」

身体が固まって膝がカクカクする。
まーくんが砂を払い、「もー!けっこう冷えちゃってぇ」と抱き寄せてくれた。
じわりと目の前が滲む。
泣くな俺!これじゃ本郷の言う通りだ。

「本郷となんかあった?」
「……なんも」
「なんもあったんだ」

そう言って、まーくんは俺の喉の辺りを指でするりとなぞった。
痛かったから痕が残ってしまってるのか、これはもう出禁かなぁなんて言うから焦る。
「ちが、ちが、俺が怒らせたのっ」
「ふーん?」
「てかさぁ、まーくんが本郷が俺のこと好きだとか言うからさぁ、ヘンなことになったんじゃん」
「えー?俺のせい?」

自分でもむちゃくちゃ言ってると自覚がある。
でも今はあいつを悪者にしたくなかった。
まーくんは俺の喉を撫でながら、
「ヘンなことってなに?告白でもされた?」
「壁ドンされた」
撫でていた指がぴくりとする。
ヤバい…余計なこと言ってしまったかも。

「一緒に帰ろうね、かず」

ニッコリ笑ったまーくんに店まで連れ戻され、バイトが終わる時間までいつものカウンター席に拘束?されるという事態に。
俺はおとなしく勉強しながら、チラチラと様子を伺うと、目が合うたびにニッコリされる。
こわぁ…。
大丈夫かな、俺。
口は災いの元だと学んだその場で、二度目もやらかすなんて、あいつの言う通り俺はバカに違いない。