応用問題に入って少し考え込んでいると、席二つ離れたところに座るおじさんとマスターの会話が耳に入ってきた。
「せいちゃんはまだ帰ってこないんかね」
「いやぁ、なかなか頑固なとこありまして」
「どうせなんかやらかしたんだろ?早いとこ謝って戻ってきてもらいなよ。娘さんが可哀想だ」
「なにもしてませんって。お互いの考え方の違いというか…」
「謝るが勝ち!」
いやいやいや…としきりに返すマスターも、たいがい頑固だな。
なんて聞き耳たててると、本郷にまたシャーペンでつつかれた。
「痛っ!」
「真面目にやれ」
つつかれた腕を撫でながら、ふと時計を見たらもう五時半を過ぎていた。
まーくん遅いな…。
そこで気がついた。
バイトの時は水曜日ではなくても、えりかちゃんを迎えにいくと言っていたから、もしかしたら学童に直接向かってるかもしれないな。
ノートの残りページが少ないのを理由に、「ちょっと文具屋さんに行ってくる」と、買い物がてらえりかちゃんを迎えに行くことにした。
外に出て深呼吸。
緊張してるのかな、本郷といると肩がこる。
まーくんに会いたいな。
俺は小走りで文具屋さんに急いだ。


ノートを買って、学童の方へ歩いていくと、なにやら言い争う声が聞こえてきた。

「だからちゃいますって!」
「この子のこと、つけ回してただろう!」
「そんなんやないんです。信じてもらえへんかもしれませんけど、俺は…」

そこには、えりかちゃんを後ろに庇うおじさんと若い男の姿があった。
おじさんは確か、商店街の会長さんだ。
若い方は……雨の日にまーくんにぶつかった奴に似てる?ような気がした。
「えりかちゃん!」
俺の呼びかけにえりかちゃんの顔がパッと明るくなる。「かずなりっ」と相変わらずの呼び捨てで俺のところへ走ってきた。
こっちを見た男は、やっぱり雨の日の男だった。
そいつは俺の顔を見るなり、手を合わせて言った。

「なぁなぁ、あんたからもこの人に頼んでくれん?俺、この子とどうしても話さなあかんねん」

はぁ?
この間の不審者だよね?
俺はそいつの神経を疑った。

「あんた、誰?」

俺はえりかちゃんを抱えて、真正面から向き合った。










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すみません…
正しい関西弁がわかりません
生暖かい目でお願いしますm(_ _)m
←博多弁しかわからない