熱でもあるのかとまーくんのおデコに手をあてた。
その俺の手をまーくんが引きはがす。
「熱なんてないって」
「だって、ヘンなこと言うから」
「ヘンって…」
言いかけたまーくんが、急にああーっと声を上げて頭を掻きむしった。
「な、なに?」
「言わないつもりだったのに!俺のバカー!!」
「いやいやいや、おかしいって。本郷がそんなわけないじゃん」
「もぉー、そんなわけあるの!」
なんだよ、それ。
さすがにムッとして言い返す。
「ないね!いっつも不機嫌な顔してるしさ、俺のことなんだかんだ怒るし。この前なんかバカだって決めつけてきたりしするし。むしろ嫌われてると思ってるよ、俺は!」
まーくんは掻きむしる手を止めて俺をじっと見た。
「……仲よすぎ」
「はぁ!?どこが!なに聞いてん…」
それから先は続けられなかった。
まーくんの大きな手で顎をつかまれて、唇を塞がれてしまったから。
理不尽だ。
とは思ったけど、実際本郷がどう思っているのかは関係なく、まーくんがモヤモヤしていることは、触れた唇から、肌から伝わってきた。
だから大人しくされるがままになる。
まーくんを不安にさせてたなんて考えてもみなかった。どこを見たらそう思うんだよ?
俺的には、幼稚園時代から本郷はジャイアンそのもので、この前助けてくれた時はまさに映画版ジャイアンだった。ほら、映画の時は頼もしい奴になるじゃん。そんなくらいの認識なんだけどな。
俺が大人しいのをいいことに、まーくんの手がどんどん追い立ててくるから。
「まー…く、んん」
ジャイアンのことを考える余裕も、怖い記憶がよみがえる暇もなく、とにかくヘンな声が漏れないようにするのに必死で。
ああぁ、姉ちゃんたちぐっすり寝てますように。