弁護士。
潤くんはもう将来のこと考えてるんだ。
俺なんて漠然と、まーくんと同じ大学に行けたらと思ってた程度。社会に出たら、どこかの会社で働くんだろうなくらいなもので。
一人置いてかれるみたいで少し焦る。
「翔ちゃんは大学出たらどうするの?」
「俺?俺は院までいって、親の会社を手伝うんだろうな」
そうか。翔ちゃんのお父さんは、大きな会社の社長さんなんだっけ。
「でもいずれ、自分の会社を立ち上げてみたいと思ってる」

……そっか。すごいな。
みんなちゃんと考えてるんだ。
そういえばまーくんはどうするんだろう。
昔は野球選手になりたいなんて言ってたけど、そんなの子供のころの夢だし。
ふつーに会社に就職するか、教育学部だから先生になるのかなぁとしか思ってなかった。

「まあ、将来のことも大事だけども、今問題なのは俺らはみんな文系だってことだ。雅紀がニノは理系だと言ってたからさ」

確かに俺は理系クラスだ。
なんとなくだけど、パソコンとか好きだし、理工学部の情報系がいいかもとは思ってるから。

「つまり、理数系は基礎は教えられるが、応用はかなりキツいと思われるわけだ」

翔ちゃんは、友人に頼んでもいいけどさすがに格安でとはいかないし、理系だけ塾に行くか、もしくは自力で頑張るかと提案してくれた。
うーん。
親にあんまり負担させたくないんだよな。
そう言って迷っていると、潤くんが言った。

「自力でやれば?それでわからないところは本郷に教えてもらえばいいじゃない」

え、えぇぇ、本郷に??
「あいつ理数に鬼つよいだろ」
張り出されるされる実力テストでの順位は、ほぼTOP3のどれかなんだと潤くんが言う。
そうなんだ。
俺、全然見ないから知らなかった。
「あいつ、そういや医者になるって言ってた」
「へえぇ!そうなんだ」
それならもう少し笑顔の練習も必要だなと潤くんは笑った。俺もそう思うよ、だってあれじゃ怖くてなんにも聞けないもん。
「じゃあ、あいつに理数習う代わりに、ニノが笑顔の練習に付き合ってあげれば?」

マジで??
無理だろそんなの。
どうせ「お前に教える義理はない」とか言われるよ。笑っても、それはそれで怖そうだし。

俺はしり込みした。