先生に出来上がったプリントを届けて、その足で生徒会室にむかった。
今日から翔ちゃんの家庭教師が始まるので、潤くんと待ち合わせなんだ。
「バカだバカだってさ、ひどくない?」
さっきの本郷とのやりとりを嘆く俺に、潤くんは苦笑い。
「まぁ、あいつなりに心配してくれてるんじゃない?」
そうかなあ?
それならもう少し、優しくてもよくない?
ぶつぶつ言いながら校門まで来ると、
「遅いぞ、おまえ達」
なんと翔ちゃんが待っていた。
しかも車で。
潤くんは電車で通学しているから、今日は俺も自転車を使わずに、一緒に電車に乗るつもりだったのに。まさかのお迎え。
「え。なにこれ。潤くんは特別待遇?」
夏休みの合宿の時は確かに乗せてもらった。
でもそれっきりなんだけど。
「ニノだって乗るだろ」
潤くんは呆れたように笑いながら、後部座席のドアを開けてくれた。
乗るよ、乗るけどさ。
潤くんはごく自然に前の座席に乗り込んでる。
知らない間にこんなに仲良くなってたんだ、この二人。
「今日はたまたまだって。次は無いからな」って、翔ちゃんは後ろに手を伸ばして俺の頭をポンポンした。
翔ちゃんの頭ポンポンも悪くないけど、やっぱりまーくんのポンポンが好きだな。
潤くんの家はマンションの最上階にあり、中もとてもオシャレで、思わず靴下が汚れてないか確認してしまった。
うちと同じなのはお姉ちゃんがいることくらいかな。まだ帰宅してないみたいだけど、きっと潤くんに似てまつ毛なんかバシバシな美人なんだろうなぁ。
「今日から勉強始めるわけだけども」
翔ちゃんがテーブルに手をついて言った。
「ニノはさ、どこ狙ってるの」
「え、俺?」
聞けば、潤くんは翔ちゃんが通ってる大学を目指してるんだって。それも法学部。
それってもしかして…。
「俺、弁護士になりたいんだよね」
そう言い切る潤くんが、なんだか眩しかった。