いっぱい触りっこして、そのままじっとまーくんの腕の中でうっとりしてた。
今日もなんだかいろいろあったし、もうこのまま寝ちゃいたいな…。
「やべ、もう12時前だ」
まーくんがゴソゴソしだして、俺も眠い目をこすった。一瞬、まーくんの目が「泊まってく?」と聞いているような気がした。
けど、ケータイに母さんからのメールが来てるのを見るとそうもいかなくて。
心配性のまーくんに見送られて俺は家に帰った。俺は女子高生か!と一応ツッコむのも忘れずに。

自分の部屋に入ると、とたんに淋しくなる。
別れ際に触れた手の温もりがよみがえって、それが俺の肌の上を滑ってた感触まで思い出され、一人で勝手に赤くなってしまった。

ほらぁ、結局なんも勉強できなかったじゃん。

受験生としてはどうなんだと思う。
そう反省する端から、まーくんの驚いた顔を思い出してにやけちゃう。俺だってキスくらいするっての。されるばっかじゃないんだからな!
布団に顔を埋めてふと思う。

さっきまで一緒だったのに、もう会いたいなんて…俺大丈夫かな?

自分の気持ちは激重過ぎるのではないかと心配になっていたら、スマホがピコンと鳴った。
まーくんからおやすみメールが届いたのを確認して少し安心する。
わざと素っ気ない返事を返してやった。



まーくんのバイトは、マスターの手の傷の抜糸が済むまで毎日夕方通うことになっていた。
気になって仕方ないので、何度か様子を見に喫茶店まで行ってみた。
するとなぜだか本郷までついてくる。
そうすると神木までついてきて、修学旅行係の仕事する羽目になった。
ちなみに生田は金欠だとかで来ないが、どうせまたどこかの部活の助っ人してるに違いない。
まーくんはマスターと同じ茶色のエプロンをして、丁寧に接客していた。なかなか様になってるじゃん。ちょっとよそゆき顔なまーくんって、ほんとにカッコイイからね。
てか、ほぼ常連さんばっかりな喫茶店なのに、少しずつ女性客増えてないか?
え?まーくんのせい?
確かにめっちゃイケメンだけどさあ。
マスターだってイケメンだよ?

「おい。聞いてんのか」

痛っ!本郷にシャーペンでつつかれた。
まーくんに見とれていたのが恥ずかしくて言い返そうとしたけど、本郷の三白眼見たら声が小さくなってしまった。
「…聞いてるもん」
「嘘つけ」
本郷の冷たい視線が刺さる。

「おかわりいかがっスかー」

突然現れたまーくんが、返事も聞かずに本郷の空のカップにコーヒーを注ぎ込んだ。
「ちょっ…!頼んでない」
「サービスサービス」
笑顔のまーくんを本郷が警戒して見上げた。
「…なんで?」
「俺が淹れたから♪」
とたんに本郷が俺に「おまえ飲め」とカップを押し付けようとするから、すかさずまーくんが阻止する。

「なになになに、にのちゃんと間接チューでもしようっての?よくないなぁ」

何言い出すんだよ!
いや、笑顔がコワイコワイ。
一触即発の二人に、神木がニコニコ本郷を回収して「また明日〜」と帰って行った。