まーくんちの食卓で遅い夕ごはんを取り、部屋に上がる。本来今日は勉強を教えてもらうために来たんだ。
俺も高3、受験生になったからね。まーくんも翔ちゃんに家庭教師してもらっていたし、今度は俺がってまーくんがはりきってる。
でもさ、なんかさ、俺は迷ってるよ。
「バイト入れてんじゃん」
「土日の日中ならできるっしょ」
「まーくんはいつ休むのよ」
「大丈夫だいじょうぶ!」
「俺に教えたってお金稼げないよ?」
そこでまーくんは片方の眉をピクリと上げて俺に向き合うと、顔を覗き込んできた。

「なんだよ、イヤなの?」

イヤなわけじゃない。そうじゃないんだ。
これまでも一緒に宿題したり、テスト勉強したりしてきた。イヤだったことなんて一度もないよ。
むしろさ。
俺は両手でまーくんのほっぺたを包んだ。
そして顔を近づけて「ちゅっ」と音をたててキスしてやった。まーくんは黒目がちな目を見開いて俺を凝視した。
「…へ」
更に続けて深く口づける。
気がついたら背中にまーくんの腕が回されていて、そのまましばらくキスを楽しむ。
顔が離れてから俺はにっこり笑って言った。

「集中できる気がしないんだよね」

まーくんが口ごもるのがわかった。
俺だってお年頃の高校生男子だよ?これまでと同じようにはできない予感しかしない。
「…じゃあどうすんの」
赤くなったまーくんがボソリと聞く。
「翔ちゃんに頼んでみようかなと思ってる。前みたいに潤くんと一緒に教えてもらえないかな」
元生徒会長の潤くんなら格安でいけるよね?
そう言ったら、まーくんに呆れられた。
「ちゃっかりしてんなあ」
「そっちこそ、バイトバイトってさ。学費にでも充てるの?」
まーくんは「んー」と言い淀んで
「まぁ、いろいろだよ!」
と笑った。
いろいろってなんだよ。なぁんか隠してるような気もするんだけど?
そう思って見上げたら、強く引き寄せられてもう何も聞けるような状態ではなくなって。
せっかちな大きな手がシャツの中に潜り込んでくる。俺は腕をまーくんの首に回して、キスに応えた。

だから言ったじゃん。
勉強なんてできないってさ!