ちょっと小話
本日お誕生日のぶちょー様に捧ぐ♡
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ピカピカの一年生になったかずくんは、身体の半分くらいあるランドセルを背負って元気に通ってる。
下駄箱では六年生が待っていて、新一年生のお世話をするのが決まりだ。
今日も六年生のお姉さんに早速可愛がられてる。
なんでも「今年はめっちゃ可愛い子がいる!」という噂が瞬時に広がり、お世話係の獲得合戦勃発。
しかも女子だけでなく男子までもがその取り合いに混ざってるらしいから、ほんとにほんとに心配が尽きない。
その日の放課後は、かずくんと出かけることになっていた。
もうすぐある全校遠足のおやつを買いに行くんだ。
かずくんは、クラスも登校班も同じでなかよくなった風間と一緒に待っていた。
「まーくん!」
俺を見つけて笑顔がはじける。
そんなかずくんにいつだってドキドキする俺。
でもそれを風間に知られるのはちょっと恥ずかしいから、なんでもないふりで頷くだけにとどめた。
「今日行くお店、なんて言うんだっけ」
そう尋ねると、風間が細い目をきょろりと回して
「ひみつや!」
まるで重大なお知らせみたいな調子で答えた。
「え?秘密なの?なんでさ」
「だからひみつや!」
「えぇぇ??」
「名前がひみつやなんだよ!」
かずくんが目を輝かせて「なんかワクワクする名前だよねぇ」と俺の腕にぶらさがってきた。
それまではすぐ近くの商店街にあるお店でよくお菓子を買っていた。そのお店はお菓子だけでなくおもちゃも扱っていて、100円で遊べるちょっとしたゲーム台なんかもあった。
それで上級生が入り浸ったったり、些細ないざこざが起こったり、なにかと問題視されていたから、別の幼稚園に行っていた風間からそのお店を教えてもらうことにしたんだ。
「古い駄菓子屋さんだよ。おばちゃんが一人でやってんの」
学校を越えた先にある商店街の奥の奥に、その駄菓子屋さんはあった。
見るからに古いたたずまいで、小さいお店いっぱいに駄菓子という駄菓子が所狭しと並んでいる。店の奥には木枠のガラスの引き戸があって薄暗く、お客の子供たちは結構いるのに大人の気配がなかった。
「すぅごぉぉぉい!」
かずくんが俺の手を掴んで声をあげた。
その声に押されるように、先に入っていった風間のあとを追いかけた。
おやつは200円まで。
あれもこれもと目移りしてしまうが、慎重に選ばないとあっという間に予算オーバーだ。
「んー、どれにしよぉかなあー」
かずくんは俺にぴったりくっついたまま、キョロキョロ見回してる。慣れない古いお店が少しこわいのかもしれないな。
散々悩んでようやく小さいカゴに200円分(たぶん)のお菓子を集めた。三人で中身を見せっこしてると。
「決まったのかい?」
急に声がして慌てて振り向いた。
びっくりしたかずくんが俺にしがみついてきて、あやうくカゴを落とすとこだった。
見ればふわふわのカーディガンを羽織ったおばちゃんがにこにこ立っている。誰もいないと思ったのに、どこから湧いて出た?ワープでもした?
「おばちゃん、これ200円超えるかな?」
慣れてる風間がカゴを差し出すと、にこにこおばちゃんはチラリと見ただけで「大丈夫」と紙袋に入れてくれた。
更におばちゃんは俺たちのカゴを見て、
「200円ならもう少しイけるよ」
と言ってくれたので、二人でもう一個ずつ足した。
お金を払って紙袋を受け取ろうとしたら、おばちゃんは小袋のスナック菓子を俺たち三人に渡してくれたんだ。
「え、これ…」
「はじめましてのオマケだよ」
途端に風間が「俺違うよ」と返そうとする。
「いいんだよ、お客さん連れてきてくれたろ?持っておかえり」
俺たちは顔を見合わせて笑うと
「おばちゃんありがとう!」
と大きな声でお礼を言った。
おばちゃんはやっぱりにこにこ笑っていた。
お店の外に出ると、さっきまで晴れていた空がいつの間にか黒い雲に覆われている。
「あれぇ?雨が降るのかなぁ?」
それを見たかずくんの表情まで曇った。
「まーくん、どうしよう。明日雨になっちゃったら。遠足なくなるの?」
延期になると教えても、かずくんの瞳はうるうるしたままだ。おやつもだけど、かずくんはママのお弁当を楽しみにしてるんだよね。給食にまだ慣れないから。でも本当は延期になったほうがもう一度お弁当作ってもらえるんだよな。でもその時はしょんぼりしてるかずくんが可愛くて気がつかなかった。
「大丈夫だよ。おばちゃんがてるてる坊主作っておくから」
かずくんはくるりと振り返っておばちゃんを見た。
「おばちゃんのてるてる坊主はよぉく効くんだよ。特別なおまじないかけてるからね」
そう言っておばちゃんはうんうん頷いた。
とても優しい笑顔だった。
そして次の日。
本当に晴れたんだ。
夜に降っていた雨があがって、またとない遠足日和になっていた。
「晴れたね!」
かずくんも晴れ晴れとした笑顔だ。
「おばちゃんのおまじないが効いたんだ」と感心している風間にかずくんが小さな声で聞く。
「あのおばちゃん…魔法使いなのかな?」
「えー?どうだろう」
そこは否定しないんだ。思わず笑ってしまったけど、確かに不思議な雰囲気だったな。
「もしそうだったら、すっごくいい魔法使いだよねぇ!もしかしてそれがひみつなのかな」
登校班の集合場所に向かいながら、かずくんがスキップしている。
「いつもにこにこ優しいからさ、俺たちこっそり『笑顔さん』って呼んでんだ」
風間の言葉を聞いて、俺とかずくんは「おお!」と顔を見合わせた。
「いいね、それ」
「また行こうね!」
かずくんの茶色の瞳が笑っていた。
おしまいっ
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ちなみに「ひみつや」はほんとに駄菓子屋さんらしいです。
ね?ぶちょー♡
お誕生日おめでとうございます!!!
素敵な一年になりますように\(^o^)/
ワタクシの実力では
この程度しか出来ませんが(A;´・ω・)アセアセ
どうか
お納めくださいませ♡♡
これからも
仲良くしてやってください(* ¨̮*)/(*¨̮ *)/