春が来た。
俺は高3になり、潤くんとは別のクラスになった。
まーくんはあっさり大学に合格して、翔ちゃんと同じ大学に通ってる。
みんなにお祝いされて謙遜してたけど、ものすごくがんばってたの、俺は知ってる。まーくんは努力家だからね。ほんと、ちょっと心配になるくらい。
俺もめいっぱいおめでとうって言いまくった。
うれしかったなあ!


けどさ。
いざ学校が始まると、なんだかさ。
朝は自転車で出かけても隣にまーくんはいない。
生徒会室にも顔を出さない。
もっとも、生徒会も代替わりして今は西畑が会長になり、気の合う奴らと仕事を進めてるから、俺や潤くんもだべってるだけだけど。
廊下ですれ違うこともないし、制服姿のまーくんを見ることもない。
水でびしょ濡れになって、まーくんの匂いがするタオルでごしごし拭いてもらったりしたなぁ。
正直淋しい。

わかってんのよ。
小学校に上がる時も中学校の時も、いつだってまーくんが先に行く。いつだって俺は置いてけぼり。
一ヶ月もすればその状況にも慣れてしまうんだけど、ふとまーくんの姿を探してしまう俺がいる。
でも「淋しい」なんてまーくんには言わないよ。
そんなこと言おうものなら、そりゃもうキラッキラの笑顔で何されるかわかんないもん。

大学は四月一日にきっちり始まり、入学式だの健康診断だのオリエンテーション?ガイダンス?だの、俺が想像してた以上に忙しそうだった。
大学生ってもっとヒマなんじゃないの。
思ってたより会えてなくて、余計に淋しいのかもしれない。


「え?サークルとか入んないの?」

日曜日にやっと会えたまーくんは「うん」と頷いた。
「入学式から新入生争奪戦が激しいって翔ちゃんが言ってたけど。てっきりテニス部とか入って、チャラい活動すんのかと思ってたのに」
「あのねぇにのちゃん?俺がそんなことすると本気で思ってんの?」
思ってるわけないじゃん。
けど、にのちゃん呼びされる時は要注意なので、冗談だよと笑っておく。
「じゃあなにすんの」
「バイト!」
「…そーなんだ」
なんだろ、まーくん真面目だから学費とかに充てるのかな。また頑張りすぎないといいけど。
その話はそこで終わった。

「かず、本郷と同じクラスなんだって?」

まーくんが俺をじっと見た。
なんで知ってんの。筒抜けじゃん。
潤くんに聞いたんだろうか。