軽音部の片隅で借りたギターをポロポロ爪弾きながら、チラリと菅田を見る。
「ミスコンのあと…大丈夫だった?」
なにしろたくさんの「彼女たち」にわぁわぁ囲まれて会場を出て行ったんだ。
菅田は頭を搔いた。
「それはもう、大変だったのよ」
怒る子、泣く子、混乱する子。
そりゃそうだ。いきなり振られたんだもん。
でもさぁ、たくさん「彼女」が居るってことがそもそもおかしいわけで。
その状態で過ごせてたことがよくわからない。
つまり、まーくんの周りに「彼女」がたくさんいて、俺が一人その中に交ざってる状態。
まーくんがその子たちにあの笑顔を向けている…
うわうわうわ!
ゼッタイ無理!ヤダヤダヤダ!
ただ笑ってるならまだしも、あの甘い笑顔は俺にだけであってほしいよ、やっぱり。
想像しただけなのに背中がヒンヤリした。
大変だった修羅場について話していた菅田が、ポンとギターを叩いた。
「しかたない!どんなに責められても俺が悪いんだからね」
とにかく謝りっぱなしだったと、目の前でも頭を何度も下げてる。
その様子が、どこかのお土産で貰った赤べこみたいで思わず笑ってしまった。
「で、残ったのが今の部員たちなんだね」
「そう。なんか男子も入ってくれて軽音部らしくなったな〜」
二人で楽しそうに練習している部員たちを眺めた。はっきり顔を覚えてないけど、元彼女だった子たちもいた。それはもう、菅田のガチファンだってことだよね。
菅田がスゴいのか、彼女たちがスゴいのか。
なんにしろ愛されキャラなんだよな、結局。
俺は菅田に視線を戻す。
ギターに乗せて小さな声で歌う菅田に、思いきって聞いてみた。
「由里子ちゃんは?」
歌が止まる。
菅田がまた頭を搔いた。
「考えてみるって言ってくれたよ」
「そっか!よかったじゃん」
さっき仲良さげだったし、うまくいってほしかったからホッとして声のトーンが上がってしまった。
「由里子ちゃん、好きな人いるんだけどね」
俺はその一言に固まった。