「私、入学式の時一目惚れしたんです。でも全然話す機会もなくて。」
2年生になって俺が生徒会に入ったのを知って、文化祭実行委員会に入ったんだって。少しでも近づきたかったから。
由里子ちゃんは窓越しに空を見あげながら、独り言みたいに話してくれた。
「2年生になってからですけど、気がついたんです。二宮くんを見てると必ずあの人がいるんですよね。二人でいつも楽しそうにして…妬けちゃうくらい」
由里子ちゃんはくるりとこちらを向くと、キレイな笑みを見せた。
「だから今度のこと、よかったと思ってます。すっごく悔しいですけど。」
「よ、よかった?」
「そう。だって二宮くんと相葉先輩ってあんまり自然なんだもの。そうあって当然、みたいな」
当然。
それは必然とも言える?
俺たち、やっぱり運命だと信じていいんだよね。
大昔ひとつだったんだよと、証明してくれたみたいでうれしかった。
「…気持ち悪くない?」
「どうして?気持ち悪いどころか、ほんとは私、あなた達の間に…いや違うな、あなた達のどちらかになりたかったのかもしれない」
羨ましかった。
由里子ちゃんはそう言ってまた笑った。
泣いてるみたいな笑顔だった。
「お!二宮くん!久しぶりやないの」
菅田が戻ってきた。
柔らかい喋り方は変わらず、俺の肩を抱いてうれしそうに笑った。
「ギター教えてもらうの、まだ有効?」
「もちろん。待ってたよ〜」
屈託のない様子に俺も自然と笑顔になる。
「じゃあ私、今日は帰るね」
「おぉ。また明日な」
仲良く手を振り合う菅田と由里子ちゃん。
やっぱり由里子ちゃん可愛いなと去っていく後ろ姿を見ながら思った。