緊張しながらまーくんと一緒に学校に向かった。
自転車は学校の駐輪場に置きっぱなしなので今日はバスなんだけど、降りたらまーくんが手を繋ごうとするから困ってしまう。
「なんでさぁ?いつも繋いでるだろ」
「いつもじゃないし」
なんでわざわざ今、そんな煽るような目立つことしたがるのか理解に苦しむっての。
俺は頑なにポケットに手を突っ込む。
俺の前に回り込んだまーくんがじっと俺を見据えた。
「あのさ。いつも通りでいいんだよ」
掴まれた肩が熱い。
周りが変わってしまうのなら、俺も俺たちも変わるべきなんじゃないの。
まーくん、何かイヤなこと言われたりしない?
おかしな目で見られたりするかもよ。
それで平気なの?
俺がそうされるのは構わないけど、まーくんがってなるとそれは俺が嫌だよ。
「かずのことは俺が守るから」
「俺、俺だってまーくんを守りたいんだって!」
そう言ったら、まーくんがくしゃって笑って俺の頭をわしゃわしゃしてきた。
「可愛いっ」
またそれだ。可愛いかわいいって、いつまでもたっても子ども扱い。
歳だってたった一つしか違わない…いや、今現在同い歳じゃん!あと二ヶ月くらいだけどさ。
「俺たちは変わらないでいいんだよ」
どうせなら堂々とみんなの前でイチャイチャするっていう変化ならアリかな!とか言い出すし。
呆れてポケットに手を入れたまま肘で小突くと、ひゃははとよけられた。
「そんな顔しないの」
「誰のせいだよっ」
「せっかくの可愛い顔が台無しになるだろ」
「だーかーらー可愛いって言うなって…」
ムクれる俺の前に差し出される手。
「ほら!行くよ」
そっちこそ、そんな顔すんなよ。
その笑顔は反則だって。
その笑顔に反応してポケットの手が勝手に、そう勝手に!俺の意思を無視して、差し出された手を取っていた。
もはや習性なんだからさ。
わかっててやってるだろ、ゼッタイ。
ほんとズルいよなあ!