よくよく見ると、背中合わせというより正面から抱き合ってたみたいだ。なぜ背中合わせだと思い違いをしたんだろ、おしりあるじゃん。
その理由はすぐにわかった。
顔が両側についていて全く向き合ってないからだ。
一緒にいるのに見つめあうことができないんだね。
二人でひとつっていうけど、手足も四本、頭?顔?も二つあるのなら心はどうなんだろう。
心はひとつなのかな二つなのかな。
うれしいことも悲しいことも同じように感じられるんだよね、きっと。
外側を向いている顔に、俺とまーくんの顔を当てはめてみる。
俺たちこんなだったのかな…。


「かず!」

急に目の前にまーくんの顔が現れてびっくりした。
大きな手のひらでほっぺたを包まれ、顔を覗き込まれる。
「え、なに…」
「なにじゃないよ、具合悪いの?呼んでんのにぼーっとしてるから」
見ればしょうちゃんも潤くんも心配そうな顔で様子を伺ってる。
俺、ちょっとばかり異次元に飛んでた?
「ごめん、半分寝てた」
「はあ?眠いの?」
熱でも確かめてるのか手のひらがおでこに当てられたり、顔中触られた。
「まーさーきー」
しょうちゃんの声に二人で顔を向ける。

「なににのちゃん疲れさせてんだよ。ダメだろ無理させちゃ」

呆れ顔のしょうちゃんに、まーくんが慌てた。

「無理って、一回しかシテないし!そんな無理なことさせ…イテッ」

もちろんソッコー頭をはたく。
何言ってんだよ!バカだバカだバカだ!
だいたい一回しかって、しかってなんだよ。
しょうちゃんは爆笑するし、潤くんは真っ赤になるし。ほんとろくなことしか言いやしない。

けど。
さっき真正面から俺を見つめたまーくんの顔に、今更ながらドキドキしたのは間違いなくて。
やっぱり見つめあえるっていいなと思った。


「そうだ、明日だけどさ」

潤くんに生徒会のことを話しかけられて、明日学校だということを思い出した。
漠然とした不安に囚われる。
まーくんと付き合っていることを大っぴらにした今、なにかが変わってるのかな。
まーくんは大丈夫だろうか。
バラしたのはあいつだから自業自得といえばそうなんだけど。
まーくんが後ろ指さされたりするのは嫌だな。

そんなことを考えていたせいで、返事が遅れて
「もうニノは帰って寝なね」と潤くんに余計に心配されてしまった。
やっぱり俺、疲れてんのかな。
おとなしく帰り支度をしていたら

「かず!明日の朝迎えに行くからな」

まーくんに腕を掴まれた。
「うん」と答えながら、顔が赤くなるのをとめられなかった。