駐車場は外灯から届く光だけで薄暗い。
それでも俺の表情は見えてるみたい。
「……ヤバい、どうしよう。」
まーくんがうわずった声で囁いた。
俺のほっぺたにあてた手がすごく熱い。
「帰したくなくなっちゃった…」
まぁね、帰すも帰さないもここ俺ん家だけどね。
でもわかるよ。
俺も帰りたくないもん。
まーくんの首に回した腕にキュッと力を込める。
「連れて帰りたいな。俺ん家来る?」
「うん…」と答えようとしたその時。
玄関先の門扉がガチャン!と音をたてたから二人して飛び上がった。
「うわっ!」
とたんに駐車場の灯りがつけられる。
そこには赤い顔をした姉ちゃんが立っていて、俺たちを睨めつけていた。
「…こんなとこでなにしてんのかな、青少年?」
「あ、えと、文化祭の打ち上げから帰ってきたところで、おく、送ってきたっていうか」
まーくんが説明を試みるも
「あんたたちはね、ちょっと露骨過ぎない?そりゃ応援してるわよわたしは!でもねぇ取り繕うのもけっこう大変なんだからねそこんとこちょっとは考えてもらいたいわけよこの前だってねあんたたちが部屋でなんやかんや音をたてるからお母さんに」
機関銃みたいにまくしたててくる。
ヤバい、姉ちゃんも飲み会かなんかの帰りだ。
あきらかに酔ってる。
こんな時の姉ちゃんは最強だ。
逆らったところでろくなことにならない。
俺は慌てて姉ちゃんとリュックを回収し、ボーゼンとしてるまーくんにバイバイと手を振った。
うう、ツラい。
俺だって手なんか振りたくないよ。
後ろ髪を引かれるって言うけど、こういう気持ちなのかな。むちゃくちゃ引っぱられてる。
姉ちゃんが後押ししてくれたから今の俺たちがあるとも言えるんだけど、さすがにうらめしく思うよね、こんな時。
すっかりその気になってたから余計にガッカリだ。
浮き立ってた心がしゅるしゅるしぼんで痛い。
「明日俺ん家来て!」
まーくんは俺のバイバイの手をつかんで言った。
そうだ、明日は代休で学校がナイんだった。
俺のしぼんだ心は一気にふくらみ、我ながらほんとにいそがしい。こんなこと繰り返してたらマジでもたない気がする。
にもかかわらずそれも悪くないなとか思ってたりもして……俺大丈夫かな?