俺たちが慌てふためく中、まーくんの後ろからひょっこり顔を出したのはしょうちゃんだった。

「なんだか賑やかだなあ!みんなたくさん食ってるかー?しっかり食えよ!」

毎年生徒会執行部の打ち上げには歴代会長たちからのカンパが集まり、ここのとこしょうちゃんがまとめて持ってきてくれるんだって。
しょうちゃんは相変わらずの爽やかな笑顔で、胸元をぽんと叩いた。

「なんか今年もいろいろあったんだって?」
「そうなんスよ、聞いてくださいよ翔ちゃん先輩。もうびっくりすることばっかりで…」
しょうちゃんが来てまた場が盛り上がる。
あーもう、俺の話をするなっての。
またしょうちゃんに面白がられちゃうからさぁ。
げんなりして視線をそらした先に、やけに静かな西畑の姿があった。
隣りに座りそっと顔を覗き込む。
「ちゃんと食べてる?」
西畑はハッと顔をあげて俺を見た。
大きな目がなにやらうるうるしている。
「や、大丈夫?くたびれちゃった?」
「先輩、先輩はほんとに…」
「ん?」
しょぼくれたワンコみたい。
今にも泣き出しそうな様子に少し慌てた。
どうしたのか聞いても、西畑はもう何も言わずうつむいてしまうし、よくわかんないけどとにかく潤くんを呼ぼうとした。

「ごめんな」

まーくんの声がして大きな手が西畑の頭をぐりぐりした。西畑は驚いて顔を上げ真っ赤になる。
えぇ?なんでまーくんが謝ってんの。
「…おまえ、西畑になんかしたの?」
貴重な一年生に何したんだって口を尖らせる俺に、まーくんはあきれ顔でため息をついた。
そして西畑の頭をさらにぐりぐりした。
「にのちゃんは時々バカだからさぁ」
バカって言うな!なんだよもう。
そう言い返す前に、西畑がまーくんの手を丁寧に頭からよけると言った。

「僕、別にあきらめてませんから」

ピクリと眉を上げたまーくんとしばらく見つめ合う。いや、睨み合う?
なんだこれ。
俺はポカンと二人を見つめた。