生田のバカが面白半分でうさぎ頭をかぶってたおかげで倉庫の入口を塞ぐ形になり、後ろにいた実行委員たちには何が起きてたかバレずに済んだ。
「先輩たちが付き合ってるって知ったばっかだったのに…アレはショックだわ」
文化祭の後片付けもほぼ終わった生徒会室で、生田が愚痴をこぼしている。
俺はといえば。
もう穴があったら入りたい状態。生田と目を合わせられなくてまーくんの背中に隠れっぱなし。
ホントは速攻帰りたかったのに、後片付けがあるやら、このあと打ち上げに行くからとかで、まーくんがガッチリ腕を掴んで離してくれなかったんだ。
俺、焼肉とかそんなに食べないもん。
そう言ったら「俺が好きなの焼いてあげるからっ」って、もう絶対連れてかれるやつじゃん。
ちょっと興奮気味の生田の言葉に、小栗くんがニヤニヤしながら乗ってきた。
「何を見たって?」
「それがさぁ、聞いてよ旬ちゃん!」
生田は勢い椅子ごと小栗くんのほうに向き直ってまくしたてようとしたその時。
「へぇえぇー?斗真くんはどんなカワイイにのちゃんを見たのかなあ?」
さっきまで部屋のすみにあったはずの、例のうさぎの頭を手にしたまーくんがニッコリ笑って生田の後ろに立っていた。真っ黒なオーラ満載で。
「せ、先輩とイチャイチャして…」
「してて?」
「なんか先輩が乗っかってて、え、ええと」
「どんなにのちゃんだった?」
「どんなって…」
しどろもどろな生田は青くなりながら、うさぎの頭を指さした。
「こいつのせいでよく見えなかったけど、なんか、顔が赤くてカワイイかなってくらいっスかね?」
まーくんは「そうかそうか」と満足そうに笑うと、うさぎ頭を生田にすっぽり被せて低い声で言った。
「カワイイにのちゃんのことは忘れろよ。」
そうして怯える生田に着ぐるみのクリーニングまできっちりおしつけて俺のところに戻ってきた。
てか、なんだよ今のやりとり!
イチャイチャしてるとこ見られちゃった部分はスルーかよ。
おかしいだろ!?
「カワイイ、ねぇ」
小栗くんが半ばあきれたような顔で俺の顔をじろじろ見るから、またまーくんの背中に隠れた。