「菅田も相当油断ならなかったけど、今なら吉高サンだね、要注意なのは」
「ええ?何言ってんの、あの人が好きなのはまーくんじゃん!」
言ってしまってから後悔した。
なに教えてんだよ、俺。そんなこと伝えて、自分の首をしめるかもしれないのに。
「…あのさぁ」
まーくんがさっきより大きなため息をついて、俺をもう一度膝の上に抱え上げた。
「吉高サン、かずのことしか見てないよ。」
「え、だってまーくんのことかっこいいって」
「それは光栄だけど、いつだってかずのことばっか見てたんだって。俺なんかそばにある置物くらいなもんよ」
なんで気がつかないかなあ?と言われて、記憶を辿ってみるけど、その記憶の大半がまーくんで占められていて、我ながらあきれた。
「……そうかなぁ?」
「そうかなじゃない、そうなの!」
まーくんは俺の顔を覗き込んで
「そんなかずが俺はいつも心配なんだよ」
そう言ってちゅとキスをした。
こそばゆくて、照れ隠しに
「俺ってそんなに信用できない?」
と混ぜっ返したら強く抱きしめられた。
「違う。かずは自分のことに無頓着すぎなの」
うーん、買いかぶりすぎじゃない?
心配性だなって言いたかったけど、実際ヘンなおっさんに付け狙われたのを助けてもらったし、おとなしく「うん」と答えておでこを肩に擦りつけた。
「俺が卒業した後のこと、松潤や風間ぽんによくよく頼んでおかなくちゃ」
卒業という言葉に胸がキュッとなる。
いつもいつも置いていかれる。
しかたないとわかっていても、やっぱり学年の違いを恨めしく思う。
いつだってまーくんは一足先に新しい世界に踏み出していって、俺の知らない誰かと俺の知らない場所で俺にはわからない何かを始めるんだ。
もちろん俺をほったらかすようなまーくんではないけれど、繋いだ手がうっかり離れてしまうのではないかと俺は必死になる。
またそんな一年が巡ってくるのか…。
淋しくなってきゅううとしがみつく。
黙り込んだ俺にまーくんが言った。
「かずの、まだおさまってないね、辛いっしょ。シテあげよっか?」
……………はい?
それはおまえがあちこち触ったからだろ。
せっかく熱が引いてきたってのに。
いやいや、責任取らんでいいから!
てか、取るなあぁぁ!!