「…なに泣いてんの」

頭をポカポカされている事など意に返さず、まーくんは俺を膝の上に抱き上げた。
すっかりへそ曲げてる俺は膝の上でもヤダヤダ暴れた。触るな触んな!

「わかったわかった。わかったから」

強い力で抱きすくめられて、俺はまーくんの腕の中で鼻をすすった。
なにがわかっただよ。2回続けて言う時はあやしいんだからさ。

「ごめんごめん」

ほらぁ。ごめんも2回言ってるし。
俺は無言で鼻水をまーくんに擦り付ける。

「みんなに知られるの、怖いんだ?」

まーくんは大きな手で俺の涙と鼻水でぐちゃぐちゃの顔を拭った。
びっくりしてぽかんとまーくんを見た。
「俺は隠すつもりはなかったからさ。勝手に言っちゃってごめんね。そんなに泣くとは思ってなかった」
まだ濡れてる顔にほっぺたをくっつけてまーくんが囁く。

「俺のことキライになった?後悔してる?」

黒目がちな瞳が沈んでる。
その暗い穴に落ちそうな気がして、俺はうさぎの腕でとっさにしがみついた。
「なってない、後悔もしてないっ」
慌てて首を振る。
そんな顔させたかったわけじゃない。
「怖い、んだと思う」
先が見えなくて。
生き辛くなるかもしれない。
もしかしたら最悪引き離されるかもしれないんだよ?
「まーくんは怖くないの?みんなに後ろ指さされるかもしれないよ」
「怖くないよ。かずと手を繋いでいれば怖くない。」
あっと思った。それは…。
「かずが言ったんだよ。ずっと前に」
目の前に夏の濃い森が広がった。
雨が降ってたね。
二人で迷子になっても怖くなかった。
まーくんがしっかり手を握っていてくれたから、俺本当に怖くなかったんだ。
「どんなことでも乗り越えられるって思ってるよ、かずと一緒なら」
そうだろ?って強く手を握られた。

握り返したかったけど、モフモフの手ではそうもいかず、もどかしくてたまらない俺はまーくんにキスをした。
俺の手を握っていた大きな手が今度は背中に回される。
じじじと小さな音がして、熱気がこもっていた背中にひんやりとした空気を感じた。
着ぐるみのファスナーが下ろされ、俺はやっと不自由なうさぎの手から解放された。
更に足も解放しようと腰を浮かしかけたら、まーくんの手がシャツの中に滑り込んできた。

えええ、
俺まだ下半分うさぎなんだけど?