俺が駄々っ子のようにジタバタしても、まーくんは俺のおしりについてるうさぎのまぁるいしっぽをポンポンしたりして、余裕かましてる。

「えー?だってホントのことでしょ」

ホントだからマズイんだろ。
どんな目で見られるかわかってる?
ホントならなんでも言っていいのかよ。

「みんなドン引きだよ。何言われるか…」
「かず、そういうの差別って言うんだよ」
「わかってるよ!でも現実じゃん」

すれ違う人たちが俺らを振り返る。
そりゃそうだ。こんな大きなピンクの着ぐるみを担いでるんだ、悪目立ちするに決まってる。
「降ろせおろせ」とうさぎのモフモフの手で肩を叩いたけど、まーくんは構わず進んでいく。
「重いんだから暴れんなよ」
よーしよしよしとか言ってさあ!
重いなら降ろせよ、まーくんのバカ。

「先輩!」

聞き慣れた声に顔をあげると、そこには西畑と由里子ちゃん、そしてあの実行委員女子の姿。
走ってきたのか息が荒い。
「ええと、大丈夫…でした?」
西畑の目が泳ぐ。

うわぁ恥ずかしい!
こんなとこ見られるなんて
もうもう明日から引きこもってやる!
「大丈夫だよ。こいつの着ぐるみ片付けてくるからあとよろしくっ」
まーくんはニコニコ手を振ってる。
どこが大丈夫だよ?
全然大丈夫じゃないっての。
「はい!」と西畑と実行委員女子が答える中、由里子ちゃんだけじっと俺とまーくんを無言で見つめていた。

三人と別れて生徒会の倉庫につくまで、俺は半泣きでぶすくれてた。
わざと脱力して重さを倍増してやる。
「うおっ、重い重い重いっ」
まーくんはよろめきながらも、意地なのか最後まで俺を肩に乗せて倉庫までなんとかたどり着いた。

「もぉっ、なんで力抜くかなあ!?」

額の汗を手で拭ってまーくんが座り込む。
俺も床にへたりこんでそっぽを向いた。
すると伸びてきたまーくんの両手でほっぺたを包まれ、否応がなしにまーくんの方を向かされる。

「そんなにヤだった?」

少し悲しげな瞳にドキッとした。
イヤ…なのかな、俺。
イヤではないと思うけど。
俺のまーくんって大声で自慢したい。
誰にも言えない関係なのが苦しい。
そう思ってモヤモヤしてたんだし。
でもさ、知られて困るのも俺たちじゃないの。

「だってさぁ、こんな可愛い格好で斗真にくっついてたんだよ?俺が抱っこするとこなのにさあ!抱えて歩きたくなるっしょ」

はぁあ!?

「宣伝のお仕事中は我慢したんだかんな」

そーゆー事じゃないっての!
俺はまーくんの頭を思わず叩いたけど、うさぎの手じゃ効きめなんかありゃしない。
バカだろバカだろ。
俺はこんなに悩んでるってのに。