その日以降、文化祭当日までとにかく忙しくて、まーくんともほとんど会えず微妙にギクシャクしたままだった。
しかし。
当日の午前中に、例の心霊動画の件でまーくんに捕まって追求されてしまった。
とぼけてスルーしようと試みたものの、まーくんにはあの心霊少女が俺だということがバレバレで、背中にキスマークを付けられるというトンデモナイ罰を受けた。
だって生徒会室でだよ!?
潤くんが気がついて二人きりにしてくれたからよかったけど、ほんとヤバいからね?
ふだんはそれなりに思慮深いのに、時々思いもよらない行動をとるから油断ならない。
それにしてもなんでバレたんだろう。顎のホクロ消してくれると言ってたけど残っていたのか。ざっと見、無かったと思ったけど。
まーくんは「かずの身体はかずだけのものじゃない。俺のでもあるんだから」って言うけど…。確かにそうなんだけどさ。
そんなこと、だぁれも知らないんだよ?
神木になんて言うんだっての。
そりゃコソコソ黙ってたのはよくなかったかもしれない。
でもやっぱり動画に出る出ないは俺の問題だという気もするんだよな。
モヤモヤしながら仕事に戻る。
校庭での午前中最後の演目は菅田のライブだ。
一番盛り上がるだろうから人員整理のため先に行ってる西畑のところへ急いだ。
会場にはすでに大勢の観客がつめかけていて、そのほとんどが女子な事に今更ながら驚いた。
「すごい人気ですね!」
足らなくなったパイプ椅子を並べる西畑の額にはうっすら汗が滲んでる。
ようやく並べ終わったところで菅田が登場。
女子のものすごいキャーキャーに、俺たちはしっぽを巻いて逃げ出した。
菅田の歌声は優しくて、やっぱり少しふわふわしていた。
力強い歌を歌っていても優しさが伝わってくるのは人柄なのかな。
たくさんの女子を虜にしてる博愛主義者(ほんとにあってる?)なのに嫌味がないなんてさ。
去年のライブも見るんだったなとマジで後悔していたら、菅田がマイクを持って話し出した。
「今日はみんなに伝えたいことがあります」
なにやらやけに真面目な表情。
初めて見るその様子に俺は目が離せなくなった。そばにいる西畑も菅田を見つめていた。
いつもと違う菅田に会場はざわめいた。
「俺はみんなに好きだって言って貰えてうれしかったし、みんなのこと大好きだけど。
ちょっと思うことあって…もうそういう博愛主義、やめます。これからはただ一人、一番好きな人のために歌うことに決めたから」
しんとなった会場にその爆弾は投下された。
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|ω・)チラッ
にのちゃんの心霊動画騒動←については、イベントの「【超嵐】じゃなくて 」で書いております。わかりにくくてすみません。