俺は無実だ…たぶん。
半笑いのまま、まーくんの膝の上で固まる。
何か、なにか言わなきゃと焦るのに、頭の中は空回り。えとえとえと…

「なぁんだ、これニセモノか」

指に巻きつく髪の毛を見ていたまーくんが、「誰のカツラ?演劇部?」とか言うからテキトーに合わせておいた。
ほんとは演劇部は校庭ではなく、講堂の舞台を使うから担当外なんだけど構ってられない。
リップクリームだって、唇が割れやすいのは事実だし、幸か不幸か確かに今も少し割れてるし。意味は違うけど借りたんだし。

あぁぁぁ!
別に悪いことしてるわけでもないのに。
言わないことと、嘘つくことは違うと思ってたけど、言わないでいるためには結局嘘つくことになるんだな。
周りにもまーくんにも言えないことがいっぱいで、なんだかもう俺はパンパンに膨れた風船みたい。
全部言っちゃおうかな。
そしたらラクになるかな。
でも弾けちゃったらどうしよう。

ぐるぐる考えてたら、不意に唇が熱い湿ったものに包まれた。
「…んっ…」
「ほらまた割れてる。ちゃんと塗っとけっていつも言ってるだろ…」
「んぅ」

そこからはキスが深くなって、もうなにも答えられなかった。
熱い手がシャツの下から潜り込んできて、そのうちぱんつの中にまで侵入してきたからさすがに身をよじった。
すぐに遅い夕ごはんに呼ばれるって!

「ん、ねっ…てば」

今にも母さんの呼ぶ声が聞こえてきそうで、ソワソワ全く落ち着かない。
それなのに身体は勝手に反応してしまって、我ながら笑えてくる。
(これだから男は!)
って、姉ちゃんが眉をひそめて言いそう。
だってしかたないじゃん、お年頃なんだもん。
女の子は違うのかなぁ。
男のほうがヤリたいばっかなのかな。
でもさ、でもさ、好きな人にはくっつきたいじゃない。くっついたら触れたいと思うよね?
まぁ俺の場合、触られるほうが多いけど。
それは相手がまーくんだからで。
男だって誰でもいいわけじゃないんだよ。

いや、ちょっ…
さすがにもうヤバいってぇ!