ダラダラと自転車を漕いで帰る。
気がつくと自分の家ではなく、まーくんちにたどり着いていた。
そのまま玄関から入って、ゆうくんに一声かけてまーくんの部屋に上がる。
部屋の主はいなかった。
「コンビニに行ってるよ」と、下からゆうくんの声。なぁんだ。
リュックを置いて、ベッドにころんと寝転がった。まーくんの匂いに包まれる。

………疲れた。
今日はしょうちゃん来るんだっけ?
8月後半は忙しくて、潤くんも俺も勉強会もサボっちゃったな。
でもほんとはわかってる。
疲れてんのはそのせいじゃない。

目の前に由里子ちゃんのちょっと寂しそうなキレイな顔がちらついた。
まーくんのこと、好きなんだって。
そりゃ「めちゃくちゃかっこいい」もん、俺のほうがよく知ってるよ!
モヤモヤしてたまんなくて。
まーくんの枕に頭をぐりぐり擦りつけた。

「何してんの」

枕かかえて飛び起きたら、まーくんが手に袋を持って立ってた。
「もー、俺の枕で汗拭いてんじゃないよ」
そう言いながら冷たいコーラを差し出す。
俺は枕をかかえたまま受け取って、ズルズルと床にすべり落ちた。
「準備は進んでる?翔ちゃん文化祭見に来るって言ってたよ。去年もすっごい差し入れ持ってきてくれてさ…」
話が頭に入ってこない。
「んー」とか「うぅ」とか相づちを打ちながら、まーくんの代わりに枕にしがみつく。
と、急に大きな手が俺の顔に触れた。

「少し熱っぽい?」


もう我慢できなくて、俺はその手を取って引き寄せると、勢いまーくんにキスしてた。
まーくんが驚いてるのが触れた唇から伝わってくる。
それでも構わず抱きついた。