入口が開いていたから、「こんちはー」と一歩中に入って固まった。
菅田将暉(たぶん)が女子とチューしてる!!
えええええ!?
ホントのこと言うと、目の前の状況を理解するのに数秒かかった。
わかった瞬間、菅田(たぶん)と目が合ってドキンと胸が鳴る。
「ご、ご、ごめんなさいっ」
慌てて踵を返すと外へ飛び出した。
うわぁびっくりした!
熱くなる耳を押さえていると
「二宮く〜ん」
と、のんびりした声で呼ばれた。
耳を押さえたままオタオタしてる俺の横を、さっきチューしてた女子が走り抜けて行った。
「二宮くんでしょ?入ってはいって」
何事もなかったかのような涼しい顔。
俺の見間違い?それともマボロシ??
んなわけない。ゼッタイしてたもん。
「松潤に聞いてるよ。菅田です、よろしく」
にこやかな笑顔の菅田(やっぱり)が大人に見えて、なんだか恥ずかしくなった。
「ギター練習してるんだ」
「あ、…うん」
菅田の声はとても優しくて、少し西の方のイントネーションを感じさせるふわふわしたしゃべり方をした。
さっきの動揺を引きずってる俺は、椅子に座るも落ち着かない。
ギクシャク受け答えしていたら、ふと黙り込む様子にどうしたのかと俺は菅田の顔を正面から見つめた。
「二宮くんは、キレイな目をしてるなぁ」
頬杖をついた菅田がふんわりと笑った。
その笑顔が印象的で思わず見とれてしまう。
………なるほど。
俺が女の子だったら即恋に落ちるとこだな。
ファンがたくさんいるというのも頷ける。
妙に納得した。でも嫌な感じが全くしない。
潤くんの言う通り、悪い奴じゃないんだろう。
「じゃあよろしくお願いします」
俺はぺこりと頭を下げた。
できるだけ早く上達したいんだ。少なくとも冬までにはちょっとは聴けるくらいになりたい。
菅田はやっぱりふんわり笑ってた。
家まで自転車を漕ぎながら気がついた。
将暉と雅紀、同じマサキじゃん。
だいぶ違うマサキだけどね。
なんだかニマニマしてしまった。