夏休み最終日。
まだ残ってる宿題を片付けるため、かずくんとテーブルにかじりついてる。
と言ってもかずくんはほとんど終わってて、焦ってるのは俺だけだ。
「あーもう!読書感想文なんてさぁ、なんの意味があるんだ。面白かったでいいだろ」
毎年残るのがこれなんだよな。
半分くらいは、かずくんの言う事を書いてるようなものだから、かずくん無しには出来上がらない。課題図書が違うのにわざわざ読んでくれて、ほんと助かりマス。

病み上がりのかずくんは、時折すいかを齧りながら、算数のプリントの答え合わせをしてる…
と思ったら、俺の感想文の原稿用紙に落書きしてた。
「あ、こら!ドラえもん描くなよ、提出すんだからっ」
「明日からまた一緒に走っていい?」
テーブルに頭を乗せて上目遣いで俺を見るから、ちょっとドキドキしてしまった。
「食欲戻ってんの?」
「いっぱい食べてるもんっ」
俺はわかったわかったと笑って、明日は距離を短くしようと心の中で決める。

そこへゆうくんがやって来た。
公園で遊んできたらしく、虫かごいっぱいのセミのぬけがらをおみやげと称してテーブルにばらまいた。
「あれ?肝心のセミの本体は?」
ニヤニヤするとゆうくんは顔を赤くして下唇を突き出した。
「アイツおしっこするからイヤだ」
「おまえだってするくせに」
「なんだよ、兄ちゃんのバカ!」
バカ馬鹿言い合いになって、とっ捕まえようとしたら、さっさとかずくんの後ろに逃げ込んであかんべーしやがる。
かずくんは笑いながら俺たちの間に入ってくれるんだ。
「これ、全部もらっていいの?せっかくたくさん集めたのに」
優しく聞かれてゆうくんが大人しくなった。
なんだよ、幼稚園児のくせになに照れてんだ。

「だって…それ空っぽなんだもん」

いつかの自分のことを言われたみたいでハッと胸をつかれた。