こうして俺のカブトムシ大作戦は失敗に終わった。
かずくんがカメラをリュックの奥に押し込んでくれたおかげで、写真だけは残った。
トラップの作り方と写真と載せて、もう一枚自由研究の出来上がり。
プリンターから吐き出された紙を眺めてため息をついた。
ほんとは最後に、採ったカブトムシを前に2人でVサインしてる写真を載っけるつもりだったんだけどな…。
出来上がった自由研究を持って、かずくんちに向かった。
実はキャンプから帰ったあと、熱を出してかずくんは寝込んでいるんだ。
「夏休みは遊びすぎちゃうから疲れがたまるのよね」
かずくんのママが困り顔で笑った。
そう、毎年夏休みの終わりごろかずくんはじんましんが出たり、熱を出したりする。
やっぱり雨に濡れたせいかもと思うと謝りたい気持ちになった。
「ありがとうね」
かずくんのママは伝染るといけないからと、優しく帰るように促してくれたけど、俺は隙をついて部屋の中に駆け込んだ。
「まさきくん!」
かずくんは紅い顔してタオルケットにくるまってた。俺に気がついて何か言おうと口を開けたところで顔をしかめた。
「……ま…」
「しゃべんないでいいよ」
喉に水疱ができてて痛いんだよね。
俺もなったことあるからわかるよ、水も滲みるんだよね。
そっと冷えピタ貼ったおでこに触れる。
熱々だ。
かずくんは熱でうるうるな瞳で見つめ返してきた。それとも泣いてるの?
辛そうで俺の胸も苦しい。
「元気になったらまた朝走ろうね」
かずくんがほんの少し笑った。
熱でほかほかのちっちゃい手を握りしめてから、部屋を出た。
前に、俺が死んじゃうんじゃないかって、泣いて泣いて高い熱を出し時ってあんな感じだったのかな。
弟が熱出してもかわいそうだなと思うけど、かずくんだと尚更だ。なんでだろう。
なんか、なんか消えちゃいそうだからかな。
かずくんの辛そうな姿を見て思った。
やっぱり言わなくてよかった。
そりゃなにも起こんないかもしれないけど。
触れてはいけない…なんだっけ、パン?パンなんとかの箱。
開けると怖いことや苦しいことが飛び出してくるとかいう箱なんだ、きっと。
今じゃなくていい。
もっと俺が強くなってから。
ほんとに守れるようになってから。
それまで俺はセミになる。