キャンプ場に近づくにつれカーブが増えて、シートベルトをしていても、右に左に身体がもってかれる。その度にみんなでぎゅうぎゅう押されたりひっぱられたりで大騒ぎ。
ジェットコースターみたいって、かずくんも初めのうちは笑ってたけど、キャンプ場の駐車場に着く頃には元気がなくなってしまった。
くってりしてるかずくんが、甘えるように寄りかかってくるから背中をさすってあげる。
車の外に出ると少し元気になって、吐かずに済みそう。
俺はこんな時のために上着のポケットに入れておいたソーダ味の飴をかずくんの手に握らせた。
「ありがと」
乗り物酔いに飴が効くのか知らないんだけど、まぁ御守りみたいなものかな。
かずくんが小さな飴の袋を開けようとすると、チビっとだけ切れて中味が出てこない。
「んっんっ」ってしてるから開けてあげた。
器用なのにこういうとこ不思議で可愛いよね。
飴を食べてるのに気がついたゆうくんが「おれもおれも!」って言うから、母ちゃんのとこへ追っ払った。
だってこれはおやつじゃないんだから。
帰り用に取っとくんだから。
母ちゃんにへばりついて飴をもらったゆうくんが、俺に向かってあかんべーをしてた。
車から荷物を運び出してちょっと離れたテントを張る所まで移動。
父ちゃん達が重い荷物をよっこらせと担当してるから、俺は足元がふらつくかずくんをおんぶした。
「歩けるよ…」って言うけど、下ろさない。
「すぐそこだし」ってもぞもぞしても下ろさないから。すぐそこだから行けるって。
あきらめておとなしくなったかずくんから、甘いソーダの匂いがした。
テントを張り終えたころ、母ちゃん達がお昼のバーベキュー準備を始めたのを確認してから、俺と父ちゃんはこっそり目配せし合った。
「あー、買い忘れがあったなあ!」
ちょっと買ってくるわと車のキーをチャラチャラさせる。
母ちゃん達が呆れてブーブー言うのをしり目に、「まさき、おまえ荷物持ち!」と指名した父ちゃんは、マキの準備をしてたかずくんのパパに手を振って歩き出した。
俺も急いであとを追う。
かずくんがじっと見つめてきたから、声は出さずに「待ってて」と口を動かした。
かずくんがこくんと頷いて手を振ってくれた。
さあ、作戦決行だ!!