朝ごはんもそこそこに、昆虫図鑑をひっぱりだしてきて、カブトムシのページを探す。
どうやったら捕まえられるんだろう。
とにかくデカいやつ。
図鑑には簡単なトラップの作り方が載っていた。けど、そこの公園で!ってわけにはいかないよな。
やっぱ山とか、林とか?
ということは…キャンプでだ!

毎年夏休み恒例のキャンプ。
うちとかずくんち一緒に行ってて、今年ももうすぐだ。
かずくん虫苦手だから、今まで川ばっかしで遊んでたけど、今年はデカいのたくさん捕まえてびっくりさせよう。
怖がっちゃうかな。
でもかずくんは触んなくていいんだ。
見るだけ!
そんでもう一枚自由研究増やせれば充分。

「あ!カブトムシ!」

俺が図鑑見てるのに気がついたゆうくんが背中に乗ってきて、得意気に説明を始めた。
めっちゃ詳しくておどろいた。
さすが昆虫カードたくさん持ってるだけのことはあるな。
「でもにいちゃん。なんで図鑑なんか見てんの?にいちゃんもカードほしいの?」
「え?欲しくないけど」
「じゃあなんで見てんの?」
……ヤバい。
こいつに話したら絶対かずくんに言うぞ。
カブトムシ捕まえるなんて知ったら、かずくん泣いちゃうかもしんない。
あの茶色の瞳を涙でうるうるさせてるかずくんを思い浮かべる。
可愛い…。可愛いけど、それはダメだ。

なんでなんでとうるさいゆうくんが、母ちゃんと買い物に行っているすきに、パソコンでもっとすごいトラップがないか調べようとしたら、父ちゃんにみつかった。

話を聞いた父ちゃんはニヤリとした。
「俺に任しとけ」
えええマジで?
大丈夫かな。
思ったことがまんま顔に出てたみたい。
父ちゃんはフンと鼻を鳴らして、腕を組んだ。

「かつての昆虫少年をなめんなよ!」