さすがに「もっかい」は勘弁してもらった。
マジで死んじゃうよ。
もう起き上がるのもめんどうで、このまま床で寝ちゃおうかなと、うとうとしかけた。
「ほらっ。こんなとこで寝ないの!」
まーくんに抱き起こされベッドに移される。
見れば手に、出してくれたらしいシャツを持ってた。
「んー…着るのめんどくさい」
「なんだよ、おなかが冷えるって言ったろ」
まーくんの目が笑ってる。
俺は裸んぼのまま布団に入ってきたまーくんの胸元に潜り込んだ。
「こうすれば大丈夫じゃね?」
「しょうがないなぁ」
口ではそう言いながら、俺のことぐっと引き寄せてくれた。
胸に耳をくっつけて、しばらく心臓のとくんとくんいう音を聞いてた。
また眠気に襲われて瞼が閉じかけた時。
「ほんとはさ」
ため息のような小さな囁きがこぼれた。
まーくんの声が肌を伝わって、耳の中に響いてきたみたいに感じた。
「ちょっと怖かった、っていうか」
「コワイ?」
「うん…。また記憶を無くしてしまうんじゃないかって」
俺が黙り込んだからか、まーくんは慌てて言葉をついでくる。
「イヤな記憶なんてないほうがいいのかもしんないね。かずがそのほうが楽ならそう、そうだよな。そうなんだけど」
忘れるためにまた苦しむ姿を見るのが
また2人の間で話せない事ができるのが
怖かった
「自分勝手だよね、ごめん」
そう言って頭を撫でてくれた。
俺は愕然とした。
俺の記憶喪失がまーくんにどれだけ大きな影響を与えていたのか。
それに気がつかないくらい俺はまーくんに大事にされていたんだね。
やっぱりまーくんには敵わないや。
涙声になりそうなのを懸命にこらえて、わざと明るく答えた。
「大丈夫。こんなことで記憶無くしたりなんかしないよ。あの時はまーくんが死んじゃうと思ったからだもん。それ以上にオソロシイことなんて、この世にない!」
まーくんの腕に力がこもるのがわかった。