そのまま力尽きて、ベッドでぐったり。
いっその事寝ようとしないでゲームでもしてりゃよかった。でもなぁ腕が痛いしなぁ。


グダグダしてると、なんだか下が騒がしい。
えっ?こんな朝早くに呼び鈴…
ぼーっとする頭が答えにたどり着く前に、階段を駆け上がる音がしてまーくんが現れた。

「かず!」

息を切らしてるまーくんはパジャマ姿。
俺の手からケータイが滑り落ちた。

「えっ、まだ6時前…」
「一晩中眠れなかったの!?」

まーくんの温かい手が俺のほっぺたを包む。
親指が涙の跡をそっと撫でた。

「なんでもっと早く言わないの!」

え、ええ?
俺がしたのメールだよね、電話してないよね?
なんで全部わかってるの…。
まーくんも眠れなかったの?


ポカンとしてる俺を抱き寄せて「こんなにでっかいクマ、目の下で飼って!」そう言ってぎゅうぎゅうされた。

「やっぱ、帰んなきゃよかった…!」

されるがままの俺は、悔しそうなまーくんのパジャマの裾を握ってた。
口を開くと泣いてしまいそうだ。
開けっ放しのドアを遠慮がちに叩く音がしてまーくんが振り返る。
姉ちゃんが顔半分だけのぞかせて、「大丈夫?」って聞いてきた。

「こんな早くにごめんなさい。今から寝るんで、よろしく!」
「はぁ!?」

姉ちゃんと俺の声がかぶる。
まーくんは全く気にせず丁寧にドアを閉めると、俺をベッドの奥に押しやりながら布団に入り込んできた。
「え、ちょっ…」
「さあ〜、寝よ寝よ」
戸惑ってる俺などかまわず、長い腕で抱きしめてくる。
寝よって言われても、あんなに眠れなかったんだよ。俺はちょっと緊張して固まってた。
「なぁにぃ?警戒してんの?大丈夫なんもしないって」
あ、でもチユーくらいするかもとか笑いながら、俺の背中を優しく撫でてくれた。

もう無理。

俺はまーくんの胸に潜り込むようにして泣いた。どれくらい泣いていたんだろう。
気がついたら、お昼もとっくに過ぎていた。
あれ?
俺寝れたんだ?
顔を上げると、まーくんはまだ眠っていた。




そんなことがあって以来、もうずっと毎日一緒に寝てる。
夜になると寝る準備を済ませたまーくんがやって来て、俺の部屋で勉強して、そして一緒に寝る。せっまいシングルベッドでだ。
朝になるとパジャマのまま自分ちに帰っていくという…大変申し訳ないことになってる。

どうしよう。
俺、一人で夜眠れなくなっちゃった。
まーくんがいないと眠れないなんて。

むちゃくちゃメンドクサイ彼女みたいじゃん!