「ん、やっ…」
誤魔化されるような気がして抗った。
でもまーくんは離してくれない。
ようやく解放された時には、かかえたままだったお茶のペットボトルが汗をかいていて、俺たちのシャツを濡らしていた。
「もうもうっ、だからなんて言ったのって」
「かずに手ぇ出すなよって言っただけ」
はあ!?
だけって、なんだそれ!
「何言ってんだよ、バカじゃないの」
「ほんとのことだよ?」
「だって、そんな…」
「だいたいね、あいつ彼女いるのにさ、かずのこと見すぎなのっ。釘さしておかないと」
「え、い、るの彼女?」
彼女いるのにって?
わけがわからない。
言ってることおかしいでしょ。
「ちょっと、意味わかんないって…」
そこでピンポーンと呼び鈴がなった。びっくりして、ペットボトルがつるりと手から滑り落ちてしまった。
「いってぇぇぇぇ!」
2リットル入りのお茶がまーくんの右足を直撃。ぴょんぴょん跳ねる足にすがりついて「ごめんごめんっ」と慌ててさする。
「なんだ、どした?」
ドアが開いて、びっくり顔のしょうちゃんが現れた。その後ろをゆうくんがすり抜けるように走るのが見えた。
すぐにドアが閉まる大きな音がして、俺はビクッとふるえてしまった。
しょうちゃんは音がした方を眺めてまた俺たちを見る、を2回繰り返した。
「いいのいいの、弟とのちょっとしたコミュニケーションだから」
ぬるくなったお茶を一口飲んで、まーくんがケロリと笑う。
俺は落ち着かないってのにさ。
「なんかわかんないけども」
しょうちゃんが、口を尖らせる俺の頭をよしよし撫でた。
「そんなことより、かずは誕プレ何がほしい?」
突然の問いかけにきょとんとした。
「ほおぉ、にのちゃんの誕生日!今月?」
「そお!17日」
「じゃあ俺も何か準備するかな」
2人の会話を聞いてようやく思い出した。
そうだよ、俺もうすぐ誕生日じゃん。
いろんな事あり過ぎて忘れてた。
そもそもそこまでこだわってないし。
まーくんと同い年になるという意味では大事だけど、学年までは追いつけないんだよなぁ。