「こっちおいで!」

まーくんが腕を広げて俺を呼ぶ。
しょうちゃんの背中にしがみついて、俺はあっかんべーと舌を出す。
挟まれてるしょうちゃんは腕を組んでため息をついた。

「それは雅紀が悪い」

そーらみろ!
しょうちゃんは俺の味方だもんね。
だいたい、さっきの事の成り行きを照れながらペラペラ喋るってのもどうかと思う。
「にのちゃんが可愛くてしかたないのもわかるよ。悪気がないのもわかる。わかるけども」

わかんない、わかんないよ。
悪気が無いからタチが悪いの!

「煩悩退散!」と、大量の数学の問題を課題にされたまーくんは、「好きな子と一緒に風呂入ったらそうなるでしょ」とかブツブツ言いながら解き始めた。



「にのちゃん」

俺を背中におんぶ状態のまま、振り向いたしょうちゃんが囁く。
それこそチユーできそうなくらいの距離なのに、イケメンだなぁと思うだけでドキドキしない。
「智くんの絵、出来上がったって」
「え、もう?」
「あの人その気になると集中力ハンパないから。3日くらい平気で徹夜したりとかね」

へえぇー、意外。いつも眠そうなのに。

大野さんの絵をとても気に入ってる画廊のオーナーが、その絵を展示していることを教えてくれた。
「雅紀にナイショで見に行ったら?なんならつきあうよ」
お仕置きだってしょうちゃんの目が笑ってる。
俺はんふふって笑い返した。
遅れてやって来た潤くんが、この不思議な構図にぽかーんとしてて、俺としょうちゃんはまたこっそり笑いあった。


「ところでさ、着替え雅紀に借りたって言ってたけど。パンツまでびしょ濡れってことは、まさかその下ノーパンなの?」

……………しょうちゃん。
そんな爽やかな顔で何聞いてんのよ。
意外に下世話だよね。ほらぁ、潤くんがびっくりしてるじゃん。
「んなわけないでしょ。ぱんつも借りてるよ」
「借りるって、え、雅紀の!?」
「そうだけど」

ん?
なんか引かれてる?
しょうちゃんだけでなく潤くんまで肩寄せあって口をあんぐり開けてる。
え、なんで??

「ちょっ、待ってよ。雅紀!にのちゃんおまえのパンツ履いてるって!!」
「うん。それがどうかしたの?」

まーくんはきょとんとこっちを見た。
しょうちゃんは頭をかかえて叫んだ。
「マジかよ!それはナイだろ!!」