モデルのバイトも終わって、カテキョもまーくんの家に戻った。
自転車の後ろに乗っけてもらって楽ちん。
ふんふん鼻歌交じりでまーくんの背中にペッタリくっついてる。
「明日からは自分で行けよ」
「えぇー」
つまんないのー。


家に帰り着くと、まーくんのケータイに着信。
俺はさっさと玄関ドアを「こんにちは〜」と開けようとした。
「あれ?」
いつもは開けっ放しのまーくんち。
電話を終えたまーくんが鍵を開ける。
「母ちゃんはゆうと塾の面談。帰りにばあちゃんちに寄って晩ご飯食べてくるってさ」
「へ〜。んじゃ、うちでごはん食べる?」
まーくんの部屋に入ってリュックを置くと、母さんにメールする。
「しょうちゃんも食べるかな?」
ケータイ画面を見下ろしてたら、いきなり後ろから抱きすくめられた。

「翔ちゃんは来ない」

え?

「さっきの電話、翔ちゃんから。今日急用ができたって」

え、っと。
振り返ったら、ほっぺたにチューされた。
まーくんの目がなんだか真剣なんですけど。
これは、この状況はもしかして…。
途端に心臓がはね上がる。


抱きしめられたまま、よろよろベッドまで押されて、くるりと向きを変えると座らされた。
床にしゃがみこんだまーくんにキュッと手を握られて、耳が、顔が熱くなる。

「こないだはごめんね。俺、なんか焦っちやって。びっくりしたね?」

きゅんとする。そうだよ、びっくりしたんだから。俺も蹴っちゃってごめんね…。

「もっとゆっくり、いっぱい触って気持ちくしてからすればよかったね」


…………………はぁ??いや、そこ!?
一発頭はたいていいやつだよね、これ。
なんか、いっつもズレてるっての。

けど、はたくのはやめた。
あれからいろいろ考えて、俺決めたんだ。
とにかく応えてみようって!
正直できる気しないんだけど、…コワイしさ。
でもまーくんがやってみたいって言うのなら、俺もがんばってみるのもアリかなって。
後悔したくない。
西畑のあの辛そうな顔を見てそう思ったんだ。


俺は握られてた手をそっと離すと、まーくんの首に回して、チュッとキスをした。
「お?」って顔してるまーくんをじっと見つめる。
さあ、こい!
がんばれ俺!!