みんなお風呂が済むと、合宿夜の部開始。
といっても、まーくんだけ。
大野さんはモコモコの上下を着込んで、すでに座椅子で舟こいでるし。
俺と潤くんは、課題を終えてくつろぎモード。正確に言うと、潤くんはまだやりたそうだったけど、まぁ受験生優先ってことで。

「さぁ、受験生。古文行こうか!」
「えぇぇー」
「助動詞の活用変化、全部言えたら寝よう」

「じゃあねっ」と2階に寝に行こうとする俺と潤くんに、まーくんが情けない顔で助けを求めてくる。
「ん〜、『べし』は?」
「べべし?えぇと、べく、べから……んんと」

がーんば!って小さく手を振って、潤くんと2階に向かう。
階段は灯りがついてるのにやっぱり薄暗くて、2階も穴倉みたいに真っ暗。1人じゃなくてよかった。
それでもよじよじ登ってたら、潤くんが振り向いて、手を差し出してくれた。
2人で手を繋いで布団を敷いた部屋の電灯をつけて、ほっとする。
下からは、お経のような不思議なまーくんの暗唱が響いてきて、コワイんだか可笑しいんだか。

布団に入っても落ち着かない。
見えちゃいけないものが見えやしないかとソワソワしてると、

「聞いてもいい?」

潤くんに話しかけられた。
キョロリと潤くんを見つめる。

「ニノはさ、男の人が好きなの?」

俺は虚をつかれて、黙り込む。
潤くんは慌てて「ごめん!やだったら答えなくていいよ」と起き上がった。
5月とはいえまだ夜は寒い。俺は曖昧に笑って布団に促した。

「やなわけじゃなくて。よく考えた事なかったから」

そういう意味で言うなら、男はナイと思う。
女の子のほうが絶対いい。
これまで気になった子は当然みんな女の子だし。まぁるい胸もおしりも魅力的だし?
なにが哀しくて、男のハダカ見て興奮しなきゃなんないの。

「え。だって相葉さんと付き合ってるんじゃないの?」

潤くんが驚いてる。
そりゃそうだよね。自分でも矛盾してると思ったよ、今。

「付き合ってるん、だろね」

なんかさ。
俺にとっては、まーくんはまーくんなんだよ。
男とか女とかなくて、まーくんでしかないの。

「好きになったら、偶然男だったってこと?」
「うーん。そういうのともちょっと違う」

気がついたら隣にいて、いつも手を繋いでるのが当たり前な感じ。理由なんてなくて。
ただまーくんだから。
隣にいないなんて考えられないんだよね。
楽しいことも辛いことも一緒に感じていたい。
そうなるとさ、もう一緒に生きてくしかないでしょ。