お昼を食べてから、たどり着いたそこは、古色蒼然とした日本家屋で、想像していた別荘というものとは、かなり違っていた。
となりのトトロの子供たちなら、「お化け屋敷!」と喜びそうな佇まい。

「ごめん。言ってなかったんだけどさ。3日前に急に親父が別荘使うって言い出してさぁ」

眉を下げたしょうちゃんの話では、ここは最近まで親戚が住んでいたおうちで、急遽借りてくれたところらしい。しょうちゃんが小さい頃よく遊びに来てたんだって。

「おばさんが掃除してくれたって言うし、物も揃ってるから困らないと思うよ」

確かに中はキレイに整えられていた。テレビなんかもそのまま残されていて、しかも結構新しい。けど、今どきサッシじゃない木枠の窓とか初めて見たかも。
天井が高くて、全体的に薄暗く、廊下がミシミシいったりして、なんだか空気までひんやりしてる。座敷わらしとか住んでそう……。


2階の3部屋を5人で分けて寝るというから、レンタルのお布団をみんなで運んだんだけど。
階段がすごい急で、転げ落ちるかと思った。

「俺、かずと寝ていいんだよね!」

まーくんの一言で、俺に視線が集まる。
え。なんか、視線がイタイんですけど。
大野さんはしょうちゃんの知り合いだから一緒だとすると、
「俺が1人部屋ってことかな」
潤くんがぽつんと言った。
「いやいやいや、こっちの部屋なら3人で寝られそうじゃない?」
俺は早口で潤くんの手を引っ張った。
まーくんが「なんだよー」と不服そうに割り込んできたけど、あいつと2人きりで寝るなんて無理でしょ。学習能力ないんだもん。ゼッタイなんかしてくるに決まってる。
ぐちぐち言ってるまーくんに、

「相葉雅紀くん」

しょうちゃんが腕を組んで不敵な笑みを浮かべてる。

「君はここへ何をしに来たんだ、受験生?
今晩すんなり寝られると思うなよオ」
「ええぇぇえ」

青ざめるまーくん。
んふふふ。
これで潤くんと2人で寝るの決定だな。
まーくんはガックリ肩を落として、しょうちゃんに連行されていった。

さっそく始まった勉強会。
潤くんももう参加してて、ほんと真面目だよね。俺はまだ見て回るていで、ふらりと応接間?に入って、カバンからケータイを取り出した。ゲームしちゃおっかなー。
ふと見ると、まーくんのカバンが開いてる。
乱暴に勉強道具をひっぱり出したあとみたい。
……………………そういえば。
俺はそおっとカバンに近づいた。

あった!姉ちゃんが渡してた包み。
ちょっと迷ったけど、こっそり覗いてみる。
「???」
化粧品?まーくんが化粧品?
あんまり意外でぽかんとする。
なんだこれ、わけわかんない。
しょうちゃんの笑い声が聞こえて我に返った。
急に後ろめたい気持ちになって、慌ててカバンに元通りに押し込んだ。